「水源地が誰のものに?」宮崎の森林717haを外国資本が取得 住民に広がる不安と規制の壁

中国旗と宮崎の水源

外国資本が宮崎の森林717haを取得 中国語話す代表に住民や議会から不安の声

目次

宮崎県都城市の山深い一帯に広がる、福岡ドーム約100個分に相当する森林──。この広大な土地が、2022年に福岡県の企業によって買われた。だが、地元が騒然とし始めたのは、代表が通訳を伴って現れ、中国語を話していたことが発端だった。

「水は命」 地元農林課が語る森林の役割

2月下旬、都城市の北諸県地域を訪ねると、谷に沿って清らかな水が流れ、斜面には深い緑が覆っていた。市の林務課長・太田原潤一さんが、静かな山中を見回しながら語る。

「この森はただの木の集まりじゃありません。雨水を蓄えて、やがて川に流す。農業にも飲み水にも欠かせない命の水源です」

だからこそ、この森林が突然「外から来た誰か」によってまとめて買われたことに、大きな戸惑いが広がった。

通訳を伴って届け出 代表は中国語話す人物

問題となっているのは、2022年2月にこの717ヘクタールを取得した福岡県内の企業。登記簿や県の調査では、同社は「天然資源の開発など」を目的としており、山林を取得する際に必要な「目的の届け出」を当初提出していなかった。

催促を受けた企業側は、同年12月、代表者が通訳を連れて林務振興局を訪問。書類には「山林の管理」とだけ記されていたという。担当職員は「代表が話していたのは中国語のようだった。名前から見ても、中国人の可能性が高い」と振り返る。

その後、林野庁の調査でも「外資系と思われる企業による取得」として報告され、民間の信用調査機関も代表が100%出資していると明らかにした。

北海道だけの話じゃなかった 県議会も動揺

この件は2022年11月、県議会でも取り上げられた。都城市選出の山下博三県議は本会議でこう問いかけた。

「外国資本による水源林の買収なんて、正直、北海道の話だと思ってました。まさか自分たちの足元で起きていたとは…」

しかし、県の環境森林部長(当時)は「外国資本による林地取得を規制するのは法的に難しい」と答弁し、国と協議していく必要があると述べるにとどまった。

法の網目をすり抜ける森林取得

日本では、外国人や外国資本による土地取得を直接規制する法律はほとんど存在しない。水源や国境付近など重要な地域では、外為法や重要土地調査法が適用されるが、それも「事後報告」が中心だ。

森林についても、実態を把握する体制こそあるものの、売買そのものを止める権限は地方にはない。今回のように事後的な届け出で済んでしまえば、地元が不安を抱えても手を打ちにくいのが実情だ。

「開発されるのでは」「水が心配」住民の声

都城市の農業関係者からは、「山の管理が本当に目的なのか」「いずれ開発されて、水が汚れるのでは」といった不安の声が上がっている。山の麓に住む男性は、「地元に説明もなく、誰が何のために持っているか分からないというのは気持ち悪い」と話す。

一方で、森林管理のための適切な投資である可能性もある。だがその場合も、地元への説明責任や透明性が求められる。

「土地は誰のものか」改めて問われる

都城市で起きたこの事例は、全国的にも見過ごせない問題を突きつけている。「土地は買った者のもの」という原則がある一方で、水や森林のように公益性の高い資源が、誰のために、どのように管理されるべきかは、もっと丁寧に議論されるべきだ。

政府や自治体には、目先の利益だけでなく、将来の安全保障や環境保全の観点からの対応が求められている。

宮崎県の森林717ha、取得したのは外国資本…「中国語」話す会社代表が通訳伴い届け出

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