カシミールでテロ、印パ緊張激化 パキスタンが貿易停止・領空封鎖、水戦争の懸念も

インドとパキスタン、再び緊張高まる

目次

テロ事件が引き金に――パキスタンが貿易停止と上空飛行禁止措置、国境も封鎖へ

南アジアの二大国、インドとパキスタンの関係が再び険悪なものとなっている。

パキスタン政府は24日、インドとのすべての貿易を停止するとともに、インド航空機による自国の上空通過も禁止すると発表した。さらに国境を封鎖し、イスラマバードにあるインド高等弁務官事務所(大使館に相当)の人員削減を通告。軍関係者に国外退去を命じた。

発端となったのは、インド北部カシミール地方で起きた観光客襲撃事件。23日、人気の観光地パハルガム近郊で武装勢力が銃撃を加え、26人が死亡、十数人が負傷した。インド側はこの事件にパキスタンの関与があると主張し、強い姿勢で報復措置に踏み切った。

「報復には報復を」 パキスタンが一連の措置を発表

インドによる対応に対し、パキスタンもすぐに反発した。

「インドの主張は一方的かつ根拠に乏しい」とパキスタン政府は非難。自国の領空をインド航空会社に使わせない方針を明らかにした。これは、両国間のフライトにとって大きな影響を及ぼす可能性がある。また、外交関係のさらなる縮小を示唆する形で、インドの高等弁務官事務所の体制も大幅に縮小される見通しだ。

さらに、両国が1972年に締結した「シムラ協定」を含むすべての二国間合意についても、「見直しの可能性がある」として、事実上の破棄も視野に入れている。

インダス水条約にも波及、国際社会は懸念

インド側は一連のテロ事件を受けて、もう一つの重要な合意にも手を付けた。23日、インダス川の水資源配分を定めた「インダス水条約」の効力を停止すると発表。1960年に締結されたこの条約は、両国の対立が激しかった冷戦期ですら守られてきた。

インダス川は、インドの実効支配地域から流れ出し、下流にパキスタンが広がっている。この条約の停止は、パキスタン側の水利用に大きな影響を与える。パキスタン政府は「住民の生存権を奪う行為であり、戦争行為と見なす」と強く反発。国防省関係者は「全面的な対応を取る」と明言した。

核保有国同士の対立激化、外交努力が問われる局面に

インドとパキスタンは、いずれも核兵器を保有する国だ。カシミール地方をめぐる緊張は過去にも何度も軍事衝突を引き起こしており、今回も小さな火種が一気に大火に広がる危険性がある。

今回の情勢を受けて、国際社会からはすでに懸念の声が上がっている。国連や主要国は、双方に対し自制を求め、対話の継続を呼びかけているが、現時点で具体的な仲介の動きは見られていない。

外交筋の間では「今後の両国の対応次第では、地域の安定どころか、国際的な経済や安全保障にも波及しかねない」との声も上がっている。

緊張緩和への糸口はあるのか

  • カシミール地方でのテロ事件が発端に
  • インドはパキスタンを名指しし報復措置を実施
  • パキスタンも国境封鎖や航空制限などで対抗
  • インダス水条約停止は両国の生活・経済に深刻な影響
  • 両国とも核保有国であり、軍事的緊張の高まりに国際社会が警戒

カシミールをめぐる緊張は、インドとパキスタンの間で繰り返されてきた。しかし、今回の対立は外交、経済、環境など複数の面で深刻な影響を及ぼしかねない規模となっている。今後、どこに出口を見出せるのか。両国の冷静な対応と、国際社会の仲介努力が試される局面を迎えている。

パキスタンが対インド貿易を停止、上空の飛行も禁止 係争地でのテロを発端に緊張が激化

関連記事

おすすめ記事

  1. 中国公船、再び尖閣の領海に侵入 138日連続の接近 緊張高まる現場海域 2025年4月5日午…
  2. 選挙のたびに政治家たちはさまざまな公約を掲げ、有権者に自らのビジョンを訴えます。 しかし、そ…
  3. 近年、多くの政治家が選挙公約として掲げてきた次世代型路面電車(LRT)の導入。しかし、実際の利用状…
  4. ドナルド・トランプ米大統領は2日(日本時間3日)、ホワイトハウスで記者会見を開き、すべての輸入品に…
  5. 全従業員をリストラ通告「夢の電池」開発企業に異変 開発データ消失の恐れも 福井県の全樹脂電池…

新着記事

  1. 中国人替え玉受験
    中国人留学生による日本大学受験不正:AI合成写真とカンニング業者の暗躍 日本の大学に留学する…
  2. 中国製ソーラーインバーターに潜むリスク:エネルギー安全保障への脅威 米国エネルギー当局は、中…
  3. ガソリン「暫定税率」をなぜ国は手放さないのか? ガソリン価格の高騰が家計を圧迫し、多くの国民…
  4. 外国免許切替、過去最多7万6千人 制度の課題と見直し検討へ 警察庁が発表した令和6年の運転免…
  5. 警察庁は、2026年4月1日から自転車の交通違反に対し「青切符」を導入し、反則金を科すことを決定し…
  6. 中国の尖閣諸島調査船活動に日本が強く抗議 国際法違反を指摘 沖縄県・尖閣諸島周辺で中国の海洋…
  7. 米中貿易協議、追加関税90日間停止で合意 米国と中国は、スイス・ジュネーブで行われた貿易協議…
  8. 白川郷、観光公害対策で駐車場予約制を導入へ 岐阜県白川村の世界遺産「白川郷」は、美しい合掌造…
  9. 「それでもお米は高いと感じますか?」JA山形の広告が波紋──米価高騰の背景と構造的課題を探る …
  10. 日本、2024年度経常収支が過去最大の黒字に — 円安と海外収益が追い風 2024年度の日本…
ページ上部へ戻る