トランプ氏『習近平主席から電話』発言、中国は即座に否定 米中関係さらに緊張

アメリカのドナルド・トランプ大統領は4月25日、米誌『タイム』とのインタビューで、中国の習近平国家主席から電話を受けたと明かした。しかし、通話の時期や具体的な内容については言及を避けている。これに対し、中国側は「事実無根」と反論。米中間の緊張がさらに高まる可能性が出てきた。

トランプ氏「習氏から電話」 時期・内容は明かさず

トランプ大統領はインタビューで、「彼(習主席)が電話をかけてきた。それは彼の弱さを示すものではない」と発言。米中間で関税を巡るやり取りがあったとしたが、電話の日時や習氏の具体的な発言については「答えたくない」として詳細を明らかにしなかった。

さらにトランプ氏は、「われわれは中国と協議している」「たくさんの国や企業と良い話し合いができている」と述べ、米国が各国との交渉を有利に進めていると強調。関税交渉については「あと3~4週間で決着する」と自信を見せた。

ただし、インタビュー全体を通してトランプ氏の主張には具体的な裏付けが乏しく、質問に対する回答も曖昧な場面が目立った。

中国政府は全面否定 「交渉そのものが存在しない」

一方、中国側はトランプ氏の発言を直ちに否定した。中国商務省の報道官は記者会見で、「現在、米中間で関税に関する公式な交渉は一切行われていない」と明言。外務省も「事実に基づかない発言であり、誤解を招く」と強い不快感を示した。

中国国営メディアも一斉に反応し、トランプ氏の発言を「米国内向けの政治的アピールに過ぎない」と批判。中国政府は「対話の扉は開かれているが、原則と立場を曲げることはない」との姿勢を改めて示した。

トランプ流関税戦略 国内経済への影響は?

トランプ政権は、2月から中国製品に対して最大145%の追加関税を課している。これに対抗して中国も米国製品に最大125%の関税を上乗せし、両国は報復合戦を繰り広げている。

こうした関税政策は、アメリカ国内ではすでにインフレ圧力を強め、消費者物価の上昇や企業コストの増大を招いている。特に低所得層への打撃が深刻で、共和党支持層の一角からも「負担が限界に達している」との声が漏れるようになった。

経済専門家の間でも、現在の関税戦争が長引けば、サプライチェーンの混乱を招き、米中双方の景気を冷え込ませるとの警鐘が鳴らされている。

今後の展開 米中関係の行方は不透明

トランプ氏はインタビューの中で、「もし1年後も高関税が続いていれば、それはわれわれの“完全な勝利”だ」と述べた。自らの政策を正当化し、強硬姿勢を崩す気配はない。

しかし、アメリカ国内では農業団体や製造業界から不満が広がりつつあり、特に秋の中間選挙を前に、トランプ氏の貿易政策が政権の足を引っ張るリスクも指摘されている。

一方の中国も、強硬な姿勢を保ちつつ、外交的には国際社会に対して「対話重視」をアピール。米中双方が国内事情を抱え、互いに譲れない状況に陥っており、建設的な対話に向かう兆しは依然として見えない。

米中関係の不安定化は、世界経済全体に影響を及ぼしかねない。両国の駆け引きがどう着地するのか、国際社会は緊張をもって見守っている。

トランプ氏「習氏が電話をかけてきた」、時期や内容は答えず タイム誌のインタビュー

関連記事

おすすめ記事

  1. 尖閣諸島
    中国海警船、またも尖閣諸島周辺に領海侵入 主権侵害は常態化へ 日本政府は厳格対応を 沖縄県・…
  2. 2025年3月24日から、新しい「マイナ免許証」が登場しました。これは、マイナンバーカードと運転免…
  3. オーバーツーリズムは、特定の観光地に観光客が過度に集中することで、地元住民の生活や環境に悪影響を及…
  4. 中国旗と宮崎の水源
    外国資本が宮崎の森林717haを取得 中国語話す代表に住民や議会から不安の声 宮崎県都城…
  5. 洋上風力に立ちはだかる現実 三菱商事の巨額損失が突きつけた問い 真っ青な海と空、そして白く輝…

新着記事

  1. 日本の「失われた30年」とODAのジレンマ 日本は1990年のバブル崩壊以降、長らく経済成長…
  2. 米国の鉄鋼業界における歴史的転機が、ついに実現に近づいている。日本製鉄とUSスチールは6月13日(…
  3. 法の軽視は正義ではない グレタ・トゥンベリ氏「8回拘束」に広がる疑問の声 スウェーデンの環境…
  4. 中国戦闘機が自衛隊哨戒機に危険な接近 45メートルの至近距離に防衛省が強く抗議 中国空母「山…
  5. 台湾の海洋調査船「新海研二號」が、日本の排他的経済水域(EEZ)とみられる与那国島沖で、無断で調査…
  6. 届け出なしで堂々営業 無許可民泊の“グレーゾーン” 民泊は観光地不足の救世主として歓迎される…
  7. 新型ウイルス「HKU5-CoV-2」が中国で発見 致死率最大35%のMERS系、ヒト感染リスクに警戒
    新型コロナウイルス「HKU5-CoV-2」発見:中国で確認された“次のパンデミック候補”に警戒 …
  8. 中国空母「遼寧」が南鳥島沖に初進出 日本周辺海域で艦載機訓練、防衛省が警戒強化
    中国空母「遼寧」が南鳥島沖に初進出 太平洋への軍事的圧力を強化 南鳥島近海に空母進出、日本の…
  9. 中国系開発による森林法違反疑い 羊蹄山麓で無許可伐採、北海道が工事停止を勧告 北海道の自然の…
  10. 尖閣諸島
    中国海警船、またも尖閣諸島周辺に領海侵入 主権侵害は常態化へ 日本政府は厳格対応を 沖縄県・…
ページ上部へ戻る