
日米通商交渉で自動車関税を巡り平行線 米は交渉対象外と主張、日本は反発
2025年5月1日にワシントンで開かれた日米通商交渉の第2回会合で、自動車や鉄鋼、アルミニウムに課されている追加関税の扱いを巡り、日米の意見が大きく食い違った。日本側が関税の全面的な見直しを求めたのに対し、米国側はこれらの関税は「交渉の対象外」との立場を突きつけた。
この交渉は、トランプ政権が復活後、再び強硬な通商政策を展開し始める中で行われたものだ。すでに完成車への25%関税が4月に発動され、今回はその対象が自動車部品にまで拡大されている。日本としては、自動車関連産業への打撃を最小限にとどめるべく、関税の撤廃を強く訴えてきた。
「交渉の土俵に乗らない」米国の態度に不満噴出
交渉に同席した日本政府関係者によると、日本は今回、自動車だけでなく、鉄鋼・アルミニウム製品への関税も含めた包括的な見直しを提案した。しかし、アメリカ側は「それらは今回の交渉のテーブルには乗らない」と明言。交渉対象は、日本に一方的に課されている10%超の相互関税の上乗せ分のみとし、輸送機器に関する包括的な関税問題からは意図的に距離を置いている様子だったという。
この対応に対して、日本政府は強く反発。「不公平な関税が続けば、貿易の健全な発展が妨げられる」との懸念を表明した。特に自動車分野は日本にとって最大の輸出産業であり、米国の強硬姿勢は国内の産業構造に大きな影響を及ぼしかねない。
日本側、農産物輸入や非関税障壁の緩和で譲歩案
交渉の中で日本側は、自動車関税の引き下げに繋がる「交渉カード」として、農産物の輸入拡大案を提示。具体的には、米国産トウモロコシや大豆の輸入量を増やすことで、米側の不満を和らげる狙いがあった。
また、輸入車に対する日本側の安全審査制度を見直し、米国車に対して特例的な審査簡略措置の対象台数を増やす方針も示した。こうした譲歩案は、米側に対して一定の配慮を示しつつも、自動車関税問題の前進を引き出すための「布石」として投じられた形だ。
日本経済への影響と先行き不透明な交渉
日本国内では、今回の交渉結果に対して落胆の声も広がっている。特に、自動車業界では「米国市場における競争力が著しく損なわれる」との危機感が高まっており、政府の対応強化を求める声が強まっている。
ある大手自動車メーカー幹部は「関税がこのまま維持されれば、米国向けの輸出採算が悪化する。生産体制の見直しを迫られるかもしれない」と語った。
また、トランプ政権が打ち出した「アメリカ第一主義」に基づく通商政策が再び顕在化したことで、今後の日米関係にも影を落としかねない。とりわけ、バイデン政権下で一時的に改善されていた通商交渉の枠組みが再び硬直化する可能性が指摘されている。
次回交渉に向けて注目集まる日本の戦略
今回の交渉で成果を得られなかった日本政府は、来月に予定されている東京での第3回会合に向け、さらなる対応を検討している。赤沢良政・経済再生担当相を中心に、産業界や関係省庁と連携しながら、より戦略的な交渉姿勢を構築する考えだ。
外交関係者の一人は「日本側としては、農業や安全審査といった交渉材料をうまく組み合わせ、米国が応じざるを得ない形をつくる必要がある」と語る。
米国側が今後も自動車関税を交渉の対象外とし続けるなら、交渉の枠組み自体を見直す必要が出てくる可能性もある。日本にとっては、通商政策の主導権を取り戻すための正念場が続く。