インド・パキスタン衝突の危機再燃 核保有国同士の対立激化、カシミールで緊張高まる

【インドとパキスタンに再び緊張走る】核保有国同士、報復の応酬に懸念強まる

南アジアが、再びきな臭い空気に包まれている。

インドのモディ首相が「テロに壊滅的な打撃を与える」と発言し、パキスタン側も「断固とした対応を取る」と強く反発。インドとパキスタン、互いに核兵器を保有する二国間で、軍事衝突のリスクが現実味を帯びてきた。

引き金はカシミールの襲撃事件

今回の緊張の引き金となったのは、インドが実効支配するカシミール地方で4月22日に起きた銃撃事件。観光客ら26人が犠牲になったこの襲撃をめぐり、インド政府は「テロリストの背後にパキスタンの影がある」と断定。激しい非難とともに軍事的報復の可能性を示唆している。

モディ首相は29日、国防相や国家安全保障補佐官らとの会合で「インド軍には行動の自由がある」と発言。報道によれば、標的や時期の決定もすべて軍の判断に委ねるという、極めて強い姿勢を示した。

パキスタン側も警戒を強める

一方、パキスタン側も黙ってはいない。

アッタウラ・タラル情報・放送相は30日、「インドが24~36時間以内に軍事行動を仕掛けてくる可能性がある」との情報を掴んでいると明らかにし、「断固たる対抗措置を取る」と応戦の構えを見せた。パキスタン軍は国境沿いに部隊を増派し、厳戒態勢を敷いているという。

パキスタンのハワジャ国防相は「我々には必要ならば使える手段がある」と、核抑止を暗にほのめかす発言もしており、情勢はますます緊迫している。

核保有国同士の対立に、国際社会も神経を尖らせる

インドとパキスタンは、1947年の分離独立以降、カシミール地方を巡ってすでに3度も戦争を経験している。両国ともに核兵器を保有しており、これまでも度々「偶発的な核戦争」への懸念が浮上してきた。

とりわけ問題なのは、両国間に「ホットライン」的な即時の対話ルートが極めて脆弱だという点だ。国連やアメリカをはじめとする各国は、すでに非公式のルートを通じて両国に自制を求めているが、現時点で外交的な打開策は見えていない。

カシミール地方は、宗教や民族の違いが複雑に絡む地域であり、一度火がつけば、消火は極めて困難だ。

経済・外交面にも波紋

今回の衝突は、単なる国境紛争にとどまらず、経済・外交にも大きな影を落としている。

インドはすでに、パキスタンとのビザ発給を全面停止。インダス川の水資源共有協定も一時停止される見通しだ。アッタリ国境の検問所では貨物の往来が滞り、すでに医薬品などの物流に支障が出始めている。

一方、パキスタンも報復としてインドとの貿易を全面停止。さらに、インドの航空会社に対する領空使用も制限する措置を検討しているという。両国の間でささやかに続いていた人的・経済的なつながりも、断絶の瀬戸際にある。

SNSでも懸念の声続出

X(旧Twitter)などSNS上では、国民から不安の声が多く上がっている。

このままじゃ、ただの報復合戦。民間人が犠牲になるだけだ

核のボタンを押す指が本気で動く前に、誰か冷静になってくれ

外交の敗北が、取り返しのつかない結末を呼びかねない

インドとパキスタンは共に巨大な人口と軍事力を持つ地域大国だ。もしこの緊張が本格的な軍事衝突、さらには核使用に発展すれば、南アジアのみならず、世界経済や安全保障にも深刻な影響を及ぼすのは間違いない。

対話こそが唯一の出口

今必要なのは、挑発の応酬ではなく、冷静な対話の再開である。

歴史的な対立が横たわるインドとパキスタンが、互いの立場を一朝一夕に理解し合うのは容易ではない。だが、戦争が招くのは新たな憎しみと終わりなき連鎖でしかない。特に、核兵器が絡むこの対立は、すべてを一瞬で無にする破壊力を持っている。

国際社会は、両国に対して強いメッセージを発信し、具体的な仲介に乗り出す時だ。インドとパキスタン自身も、国民の命を第一に考えた選択をするべきではないか。

モディ印首相「テロ壊滅で打撃」と発言 対パキスタン軍事行動か、対立激化

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