
【中国の融資対象卒業を要求】米財務長官、アジア開発銀行に圧力 日本も同調姿勢
米国、対中融資停止を要請
米財務省は4月25日、ベセント財務長官が24日にアジア開発銀行(ADB)の神田真人総裁とワシントンで会談した際、中国を同銀行の融資対象国から「卒業」させるための具体的措置を講じるよう要請したと発表した。
ベセント長官は、「中国はもはや融資を必要とする新興国とは言えず、世界第2位の経済大国としての責任を果たすべきだ」と主張。アジア開発銀行の役割について「最も支援を必要とする真の途上国に資源を集中させるべきだ」と強調した。
背景:中国の二重基準を牽制
中国は国内総生産(GDP)で米国に次ぐ規模を持つ一方、国際機関では依然として「発展途上国」の立場を利用して優遇措置や資金援助を受けている。
アジア開発銀行は設立以来、アジア太平洋地域の経済開発を支援することを目的としてきたが、中国に対する融資は近年でも続いており、2022年には約15億ドル(約2300億円)が融資されている。
米国政府は以前から、こうした「大国と途上国の使い分け」を問題視しており、今回改めて公的な場で圧力を強めた形だ。
日本政府も同様の立場
アジア開発銀行において最大出資国である日本も、米国と足並みを揃える動きを見せている。
2024年には日本政府が、対中融資を「新興国支援というADBの理念に照らして再考すべきだ」と正式に意見表明。特に、環境対策や地方都市インフラ整備など名目での融資が、実質的に中国政府の成長戦略を後押ししている現状を問題視してきた。
関係者によれば、神田総裁も「支援対象国の見直しは避けて通れない」との認識を持っているという。
エネルギー分野での協力も議題に
今回の会談では、融資対象問題に加え、エネルギー分野の国際協力についても意見交換が行われた。
ベセント長官は、クリーンエネルギー推進とエネルギー安全保障を両立させる「包括的エネルギー戦略」の重要性を強調。アジア各国での原子力発電所の安全な導入支援に向けた資金供給のあり方について、ADBの関与を求めた。
特に中国が「一帯一路」構想のもと、エネルギーインフラ輸出を強めている現状を踏まえ、民主主義陣営の資金と技術で対抗していく必要性が確認された。
中国側は強く反発
こうした動きに対して、中国外務省は即座に反発。「中国は依然として多くの地方に貧困地域を抱え、開発支援を受ける資格がある」と主張し、アジア開発銀行をはじめとする国際機関に「公平な態度」を取るよう求めた。
中国政府はまた、ベセント長官の発言について「冷戦思考に基づく覇権主義的圧力だ」と批判し、「一帯一路」構想を通じたグローバル開発支援の正当性を改めて強調した。
国際社会の見方:米中対立の新たな火種
国際社会では、今回の米国の要求を「米中経済対立の新たな局面」と見る向きが強い。
特にアジア開発銀行は日本と米国が最大出資国でありながら、中国も一定の発言力を有しているため、対応を誤れば組織運営に混乱を招く恐れがある。
国際開発金融に詳しい専門家は、「中国を融資対象国から外すにしても、段階的で透明なプロセスが不可欠だ。さもなければ、発展途上国支援というADBの根本理念そのものが揺らぎかねない」と警鐘を鳴らしている。
今後の見通し
神田総裁は「全ての加盟国と真摯に協議しつつ、アジア太平洋地域の持続可能な発展に資する道を探る」とコメント。直ちに具体策を示すことは避けたが、今後、対中融資の縮小や基準見直しに向けた内部検討が進む可能性は高い。
また、5月に予定されるアジア開発銀行の年次総会では、米国と日本が中心となり「融資対象国の再評価」が正式議題に上る見通しだ。
中国側がどこまで抵抗を強めるか、国際開発金融を巡る米中の綱引きはさらに激しさを増すとみられる。
- 米財務長官がADB総裁に対中融資終了を要求
- 中国は「途上国」としての融資継続を正当化し反発
- 日本政府も米国と連携して対中融資見直しを支持
- エネルギー安全保障強化でADBの役割拡大も協議
- 5月のADB年次総会で正式議論へ、米中対立激化の様相
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