
コメ農家「時給10円」説のカラクリ
「コメ農家の時給は10円しかない」。
そんな数字を聞かされれば、多くの人が「もっと農家を守るべきだ」と思うだろう。だが、その“可哀想な農家像”には、巧妙なトリックが隠されている。
農水省の統計によれば、確かに時給は10円とされている。だがこの数字、実は分子の所得から雇用者への賃金を除いておきながら、分母の労働時間には雇用者の作業時間まで含めている。こんな計算方法をすれば、当然時給は不当に低く見える。
正しく補正すれば、大規模農家なら1700円を超える。つまり「時給10円」というのは、現実を大きく歪めた数字なのだ。
零細農家をダシにする農協
いま日本のコメ作農家の半数以上は、1ヘクタール未満しか耕作していない。しかし、彼らが手がける田んぼは全体のわずか8%。逆に30ヘクタール以上を持つ大規模農家は、たった2.4%しかいないにもかかわらず、コメの4割以上を生産している。
本当は、食料供給の担い手は大規模農家なのに、農協は零細農家を盾に「農家を守れ」と訴え、補助金を引き出している。実態は、組織を守るために国民をだましているだけだ。
農地を売り飛ばし、地方を壊したのは誰か
戦後、国民の食料を支えるために農地は守られるべきだった。しかし現実には、農家自身が農地を次々と転用し、住宅地やショッピングセンターに変えた。その結果、かつて600万ヘクタールあった農地は、いまや430万ヘクタールを切った。
農協も止めるどころか、転用益を運用して巨額の利益を上げてきた。「農地を守れ」と口では言いながら、地元経済を空洞化させた張本人でもある。地方のシャッター通りを見れば、農協の「裏切り」は一目瞭然だ。
減反政策と税金の無駄遣い
農協と農水省は、米の生産をわざと減らす「減反政策」を続けてきた。そのために毎年4000億円もの税金が使われている。
もし減反を廃止すれば、日本の米生産量はすぐに増え、食料自給率も大幅に改善するはずだ。それなのに、彼らは「食料危機」を煽りながら、補助金漬けの農業構造を温存してきた。
さらに、麦や大豆の転作補助金にも毎年2500億円以上が投入されている。
しかし、それで得られる生産量はほんのわずか。このお金で外国から何倍もの作物を輸入できるのに、農協と農水省は国民に高い国産品を押し付けてきたのだ。
「国産推進」の裏で輸入ビジネス
驚くべきことに、農協はアメリカから穀物を輸入し、それを飼料に加工して国内に販売することで巨額の利益を上げている。「国産を守れ」と叫びながら、裏では外国産を使って儲ける。こうして農協は、「生産」と「資材供給」の両方で二重に稼いできた。
消費者は高い牛乳や米を買わされ、実態を知らされないままにされてきた。
本当に必要な農業改革とは
これからの日本に必要なのは、農協や農水省の利権構造を温存することではない。やるべきことはシンプルだ。
減反を廃止し、農地の転用を厳格に規制する。補助金に頼らない農業を育てる。国民の税金を食い物にしてきた既得権者たちにメスを入れることだ。
日本の農業は「国産を守れ」という美辞麗句の裏で、長年裏切られてきた。本気で食料安全保障を守りたいなら、まず農協と農水省の「裏の顔」に向き合う覚悟が必要だ。
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