
日米関税協議が本格化 トランプ氏「日本が最優先」と強調
2025年4月16日(日本時間17日)、米ワシントンのホワイトハウスで、トランプ政権の関税措置をめぐる日米両政府の本格的な協議が始まった。今回の交渉では、トランプ大統領自身が異例の出席を果たし、日本との交渉を最優先とする姿勢を強調。早期合意への強い意欲を示した。
トランプ氏、異例の交渉参加で日本を重視
米国側との交渉に臨んだ赤沢亮正経済再生担当相は、ホワイトハウスでトランプ大統領を約50分にわたり表敬訪問。その後、ベッセント財務長官、ラトニック商務長官、グリア米通商代表部(USTR)代表らと閣僚級協議を約75分間にわたり行った。
赤沢氏によると、トランプ氏は冒頭で「日本が最優先だ」と明言。他国とも関税交渉を抱える中で、日本との早期合意を急ぐ考えを示したという。トランプ氏は協議後、自身のSNSにも「大きな進展があった」と投稿し、日本への配慮と重視する姿勢を広くアピールした。
赤沢氏は記者会見で、「米大統領が閣僚級協議に直接参加するのは極めて異例であり、米側の日本重視を強く感じた」と評価した。
日本、米国に関税措置撤回を強く要求
今回の交渉で、日本側の最大の目的は、米国が発動している自動車や鉄鋼・アルミニウム製品への関税措置の早急な撤回だ。赤沢氏は米側に対し、関税措置について「日本政府として極めて遺憾である」と強く訴え、見直しと撤回を求めた。
同時に赤沢氏は、石破茂首相のメッセージとして、「日米双方の経済がともに強くなるような包括的な合意を、可能な限り早期に実現したい」とトランプ氏に直接伝えている。
しかし、米側が具体的にどのような譲歩や条件を提示したかについては、「交渉中であるため詳細は控える」とし、具体的な合意への道筋はまだ示されなかった。
為替・防衛費問題、交渉に影響も
今回の協議では、米国が問題視している円安・ドル高問題は議題に上がらなかった。これは、為替問題については日米財務相間の別枠組みで協議が進んでいるためだ。
一方で、在日米軍の駐留経費問題については、赤沢氏は具体的な言及を避けたものの、議題として取り上げられた可能性を示唆している。トランプ政権が関税問題と在日米軍の駐留費負担を結びつけて交渉する姿勢を見せていることから、両問題が今後の交渉過程で相互に影響を及ぼす可能性も指摘されている。
次回協議は4月中に開催へ 交渉加速狙う
両国の交渉団は、次回の閣僚級協議を4月中に再び開催することを確認。さらに、閣僚級に加え事務レベルでの交渉も継続していくことで合意した。
赤沢氏は記者会見で、「双方とも建設的な態度で交渉を進め、可能な限り早期に首脳間で成果を発表できるよう努める」と強調。石破首相自身も、交渉の進展を見極めたうえで訪米し、トランプ氏との直接会談に臨む意向を示している。
背景に米国の対中貿易摩擦、交渉戦略の一環か
米国が日本との関税交渉を急ぐ背景には、現在進行中の対中貿易摩擦や、EUや韓国など他国との複雑な関税協議があるとされる。米国は日本との交渉を早期にまとめることで、他国との交渉に対する交渉力や国際的な影響力を高めたい狙いがあるとの見方が強い。
日本政府関係者は、「米国側も他の貿易交渉を有利に進めるため、日本との交渉を速やかにまとめたいという本音がある」と分析している。
経済界、早期決着を強く要望
日本国内では、特に自動車業界や鉄鋼業界など輸出産業を中心に、米国の関税措置が日本経済に深刻な打撃を与えるとして、早期の問題解決を求める声が高まっている。
日本経済団体連合会(経団連)などは政府に対し、「一刻も早く米側との交渉で具体的な成果を得て、企業の経済活動に安心感をもたらしてほしい」との要望を繰り返し伝えている。
交渉期限は90日、合意なければ措置再発動も
トランプ政権は現在、関税措置を90日間一時停止し、この期間内に日本との合意を目指す方針をとっている。日本側にとっては、この期間内に合意に至らなければ再び関税措置が復活するという厳しい現実が待ち受ける。
交渉の残り期間が短い中、両国は具体的な分野での譲歩や妥協点を急いで探らなければならない。日本にとっては特に、米国が求める農産物市場の開放と、自動車関税の撤廃要求のバランスをいかに取るかが焦点となる。
今後の日米関係にも影響 政府の交渉力問われる
日米の関税問題は、単なる経済問題を超え、両国の安全保障や地政学的なバランスにも影響を与える問題だ。専門家は、今回トランプ氏が示した異例の「日本重視」の姿勢について、「交渉を早期にまとめるための好意的な態度ともいえるが、日本に更なる譲歩を迫るための圧力ともなり得る」と指摘する。
いずれにせよ、日本政府の今後の交渉力と外交手腕が強く問われることになるだろう。
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