オーストラリアの名門大学6校が「孔子学院」閉鎖 中国の影響力に対する警戒強まる

オーストラリアの主要大学6校が、中国政府が出資する教育機関「孔子学院」を静かに閉鎖していたことが明らかになった。孔子学院は、中国語や文化の普及を目的に世界各国の大学に設置されているが、一部では中国政府による影響力行使の手段ではないかとの疑念が指摘されてきた。オーストラリア政府は近年、外国からの干渉を防ぐための対策を強化しており、今回の閉鎖もその流れの一環とみられる。

閉鎖された大学とその

今回、孔子学院を閉鎖したのは以下の6大学だ。

  • メルボルン大学
  • クイーンズランド大学(UQ)
  • 西オーストラリア大学(UWA)
  • ニューサウスウェールズ大学(UNSW)
  • ロイヤル・メルボルン工科大学(RMIT)
  • アデレード大学

各大学は、契約の満了や新型コロナウイルスの影響による運営方針の見直しを理由に挙げている。例えば、クイーンズランド大学は、孔子学院との契約が2024年12月に満了したため、更新せずに閉鎖したと説明している。大学側は「政府からの指示を受けたわけではない」と強調するが、背景にはオーストラリア政府の政策が影響している可能性が高い。

メルボルン大学は、2007年に南京大学との提携で孔子学院を開設したが、2024年8月に閉鎖を決定。同大学の広報担当者は、「すでに多様な中国語やアジア文化に関するプログラムを提供しており、契約を更新する必要はない」と説明している。

政府の対応と専門家の見解

オーストラリア政府は、中国共産党と関係のある孔子学院について、国内での新規開設を認めない方針を示している。政府は、大学に対して孔子学院の教育内容の透明性を確保するよう求め、一部の大学には「外国影響力透明化制度」への登録を義務付けた。

中国政府は、孔子学院を「世界との友情を深めるための文化交流機関」と主張しているが、一部の専門家や人権団体は懸念を示している。国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、2019年の報告書で「孔子学院は中国政府の延長であり、政治的に敏感なテーマについての議論を制限する役割を果たしている」と指摘。また、オーストラリア放送協会(ABC)の報道によれば、孔子学院のボランティア教師として応募するには、中国政府への政治的忠誠を示す必要があったという。

一方、孔子学院を研究しているフリンダース大学のジェフリー・ギル博士は、今回の閉鎖について「特に驚くことではない」としながらも、「孔子学院が中国政府のプロパガンダを広めているとは考えていない」と述べた。また、「オーストラリアや西洋世界における中国の認識に大きな影響を与えているわけではない」との見解を示している。

今後の展望

現在、オーストラリア国内にはまだ7つの孔子学院が残っている。しかし、政府の規制強化や大学側の対応を見る限り、今後も閉鎖の動きが続く可能性が高い。すでに多くの大学が、独自の中国研究プログラムを開発する方向へシフトしており、中国との学術交流のあり方が変化しつつある。

今回の動きは、単なる大学の方針転換にとどまらず、オーストラリアと中国の関係全体に影響を及ぼす可能性がある。近年、オーストラリアでは中国の経済的・政治的な影響力への警戒感が強まり、政府は対策を講じてきた。孔子学院の閉鎖がこの流れをさらに加速させるのか、それとも新たな形での学術交流が模索されるのか、今後の展開が注目される。

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