変換効率33.84%のブレークスルー
中国の太陽電池モジュールメーカーJinkoSolarは、2025年1月6日、トンネル酸化膜パッシベーションコンタクト(N型TOPCon)を基盤としたペロブスカイトタンデム型太陽電池の開発において、変換効率33.84%という新たな世界記録を達成したと発表しました。この成果は、中国科学院上海マイクロシステム情報技術研究所による独立したテストで確認され、従来の記録である33.24%を上回るものです。JinkoSolarはこれで通算27回目の世界記録を樹立したことになります。
技術革新のポイント
JinkoSolarのペロブスカイトタンデム型太陽電池は、同社のN型高効率単結晶TOPCon太陽電池をボトムセルとして採用しています。これにより、以下の先端技術を組み合わせて大幅な性能向上を実現しました。
- フルエリアパッシベーションコンタクト技術
- ペロブスカイト界面欠陥パッシベーション技術
- バルク欠陥パッシベーション技術
これらの技術的進展により、単接合結晶シリコンセルの変換効率の限界を突破し、従来のTOPCon技術と次世代のペロブスカイト/シリコンタンデムセル技術の互換性を証明しました。
N型セルの優位性
太陽光発電業界では、これまでP型セルが主流でした。しかし、近年P型セルの変換効率向上には技術的な限界が見えてきました。そのため、より高い変換効率を実現できるN型セルが主流になりつつあります。
JinkoSolarの2022年3月のプレスリリースによると、同サイズの太陽光パネルにおいて、N型セルはP型セルよりもモジュール片面の出力で15~20W高く、変換効率が2.67%向上するとされています。また、N型セルは耐久性にも優れ、
- P型セルの初期劣化が2%、経年劣化が0.55% であるのに対し、
- N型セルは初期劣化1%、経年劣化0.4% に収まると報告されています。
JinkoSolarのグローバル展開
JinkoSolarは、世界に10以上の生産拠点を持ち、アメリカ、日本、韓国、インド、ドイツ、イタリア、スイスなどの主要国に20以上の海外子会社と15カ国に営業チームを擁するグローバル企業です。
同社のCTOであるJin Hao博士は、今回の研究開発の成果を「環境に配慮した持続可能なエネルギーの未来に向けた大きな一歩」と評価し、さらなる技術革新への意欲を示しました。
ペロブスカイト太陽電池の可能性
高効率技術としての注目度
ペロブスカイト太陽電池は、次世代の太陽電池技術として近年大きな注目を集めています。特にペロブスカイトとシリコンを組み合わせたタンデム型太陽電池は、高い変換効率を実現する可能性を秘めています。
例えば、ベルギーの国際研究所imecは、ペロブスカイトとシリコン太陽電池を組み合わせたタンデム太陽電池で変換効率28.7%を達成しました。
日本における技術開発
日本でもペロブスカイト太陽電池の研究開発が進められています。経済産業省の報告によると、ペロブスカイト太陽電池の技術開発競争はヨーロッパや中国を中心に激化しており、日本も世界最高水準の技術を有しているとされています。特にフィルム型においては、大型化や耐久性の面で世界をリードしています。
経済産業省の「次世代型太陽電池戦略」では、ペロブスカイト太陽電池が次世代の主要技術として期待されており、タンデム型の事業化も視野に入れた動きが活発化しています。
課題と展望
ペロブスカイト太陽電池には多くの利点があります。
- 製造コストが低い
- 軽量で柔軟な形状に対応可能
しかし、一方で耐久性や安定性の向上が課題とされています。産業技術総合研究所(AIST)をはじめとする研究機関では、高性能化に向けた研究が進められています。
今後、JinkoSolarをはじめとする各国の企業や研究機関が、これらの課題を克服し、ペロブスカイト太陽電池のさらなる普及に向けてどのような技術開発を行うのか、注目されます。
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