トランプ氏、同盟国に“再請求” 防衛費と思いやり予算に圧力強化か

防衛費増額も交渉カードに トランプ氏、日米同盟の「片務性」に再び不満

アメリカのトランプ大統領が、日本との安全保障関係について「不公平だ」との持論をあらためて展開した。ホワイトハウスで10日に行われた閣議の席上、記者団の前で「日本を守るのは我々だが、彼らが我々を守る義務はない」と語り、日米安全保障条約の片務性を強く批判。今後の貿易交渉のなかで、日本の防衛費や在日米軍駐留経費(いわゆる「思いやり予算」)のさらなる負担増を求める構えを示した。

トランプ氏はこの日の発言で、貿易と安全保障をあわせて交渉のテーブルに乗せる考えを明言。自身のSNSでも「交渉の場では、関税だけでなく、他の問題も一括で扱う。まさにワンストップ・ショッピングだ」と投稿し、「効率的で素晴らしいやり方だ」と自賛した。

同様の主張はこれが初めてではない。トランプ氏は今年3月にも「日米同盟は片務的だ」と発言しており、来年の大統領選を見据えて、同盟国へのさらなる“負担増”を争点化する狙いが透けて見える。

防衛費増額、日米交渉の焦点に

こうした中、日本政府はすでに防衛予算の大幅な増額に動いている。2023年度から5年間の中期防衛整備計画では、防衛費の総額を43兆円超に拡大。2025年度予算案では、過去最大となる約8.7兆円が計上された。トマホークミサイルの導入や、南西諸島へのレーダー配備など、中国や北朝鮮を念頭に置いた抑止力強化が柱となっている。

ただし、その財源をどう確保するかが国内で大きな課題となっている。岸田前首相は当初、防衛財源の一部に増税を充てる方針を掲げていたが、与党内外からの反発を受けて調整が難航。2025年度の税制改正大綱には、増税の具体策を盛り込むことが見送られた。防衛強化の流れは続くものの、そのコスト負担をどう分かち合うかについては、依然として議論が続いている。

「片務性」は本当に不公平か

トランプ氏の「日本は米国を守らない」という発言には、条約上の事実と乖離があるという指摘もある。確かに日米安保条約第5条では、米国が日本を防衛する義務が定められているが、日本もまた第6条に基づき、米軍に国内の基地使用を認めており、事実上の“基地提供による支援”を行っている。

さらに、近年の自衛隊は米軍との共同訓練や情報共有、各種の軍事協力を通じて、実質的な連携を深めてきた。防衛省関係者からは「名目上は片務的だが、実態としては日米双方の貢献がある」との反論も聞かれる。

日本政府、今後の対応に苦慮

日米同盟の将来像をどう描くか、日本政府にとって難しい舵取りが求められる。トランプ氏の再登場によって、かつての「思いやり予算」増額圧力が再び強まる可能性は高く、交渉の場で譲歩を迫られる懸念もある。

岸田政権からバトンを受けた新たな政権は、米国との関係維持と国民の理解・納得の両立という、難しいバランスを取る必要がある。防衛費の増額は国際情勢の現実を踏まえた選択ではあるが、財政負担の在り方や国会の関与、さらには国民の理解をどう得ていくか、慎重な対応が求められそうだ。

防衛費増含め対日交渉 トランプ大統領が示唆 日米同盟は片務的

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


おすすめ記事

  1. 「財務省解体デモ」という言葉がSNSで一時的に話題となったことをご存知でしょうか。2025年1月3…
  2. 令和7年度の国民負担率、46.2%に達する見通し 令和7年3月5日、財務省は令和7年度の国民…
  3. 全従業員をリストラ通告「夢の電池」開発企業に異変 開発データ消失の恐れも 福井県の全樹脂電池…
  4. ドナルド・トランプ米大統領は2日(日本時間3日)、ホワイトハウスで記者会見を開き、すべての輸入品に…
  5. 2025年3月24日から、新しい「マイナ免許証」が登場しました。これは、マイナンバーカードと運転免…

新着記事

  1. 【高校教科書に「夫婦別姓」記述が急増 賛否分かれる教育現場の声】 文部科学省がこの春公表した…
  2. 洋上風力に立ちはだかる現実 三菱商事の巨額損失が突きつけた問い 真っ青な海と空、そして白く輝…
  3. 感染症の流行
    条約より先に検証を──「パンデミック条約」大筋合意の裏で問われる“あのとき”の総括 世界保健…
  4. 米トランプ政権は11日夜、中国製品への報復関税「相互関税」の一部から、スマートフォンなどの主要な電…
  5. 国債上昇と怒るトランプ
    トランプ関税の余波、長期金利が世界同時に急騰 米国の国債市場が今、異常なまでの揺れを見せてい…
  6. 米中貿易戦争が新局面に:中国、報復関税は「これで打ち止め」 中国政府は11日、米国からのすべ…
  7. 最低所得補償で社会活動活発に、労働意欲減退せず ドイツ研究所
    無条件の支援が生む変化:世界各地で進むベーシックインカムの実証実験 近年、世界各地で注目を集…
  8. 米中貿易戦争が再燃 中国、対米関税を125%に引き上げ 米中間の貿易対立が、再び火花を散らし…
  9. 習主席「近隣国との運命共同体」構築を指示 トランプ関税に対抗、中国の地域戦略が本格化 中国の…
  10. うつ病・発達障害で障害年金不支給が倍増
    「認められません」の通知が突きつけた現実 増える障害年金の不支給、精神・発達障害者に何が起きている…
ページ上部へ戻る