中国が日本とフィリピンの安保連携をけん制 石破首相の外交に中国が強く反発

【中国が日比安保協力をけん制】石破首相とマルコス大統領の連携に警戒強める

中国政府が、日本とフィリピンの安全保障分野における協力強化を強くけん制した。4月30日、中国外務省の郭嘉昆(かく・かこん)副報道局長は定例記者会見で、「徒党を組んで地域の緊張を高めることには断固として反対する」と発言。東南アジアにおける自国の影響力を脅かす動きに、あからさまな不快感を示した。

この発言は、石破茂首相が4月下旬にフィリピンのマルコス大統領と会談し、防衛装備品の供与や共同訓練などを含む安保協力の拡大で合意した直後に飛び出したもの。両国は共同声明で「力や威圧による一方的な現状変更に反対する」と明記しており、中国を強く意識した内容となっている。

中国、東シナ海と南シナ海の“歴史的主権”を主張

郭氏は会見で、「中国の東シナ海や南シナ海における主権や権利は、長い歴史の中で確立されてきた」と強調。国際法ではなく「歴史的権利」に依拠する従来の立場を改めて示した。

さらに、日本政府に対しては「安全保障分野での言動を慎むよう強く求める」と異例の発言。安保協力を「挑発」と受け止め、対抗措置を示唆するような強い調子となった。

この背景には、南シナ海での軍事的緊張の高まりがある。中国は南シナ海のほぼ全域に「九段線」と呼ばれる独自の主張を展開しており、これに対しフィリピンやベトナム、マレーシアなどが反発。国際仲裁裁判所は2016年に中国の主張を否定する判断を下しているが、中国は「無効」として従っていない。

石破首相、東南アジア歴訪で“対中包囲網”強化

石破首相はフィリピンのほか、4月中旬にはベトナムも訪問し、同様に安保協力で一致。いずれも中国の影響力をけん制する意味合いが強く、米国を軸とした「自由で開かれたインド太平洋」構想の一環とみられている。

米国は今年3月、フィリピンと共同で大規模な軍事演習を実施。さらに、日本・フィリピン・米国の3カ国首脳会談も実現しており、中国は周辺国が“対中包囲網”に組み込まれることを強く警戒している。

フィリピンではすでに、日比間の防衛協定(VFA=訪問部隊地位協定)締結に向けた実務協議が始まっており、自衛隊の活動範囲がフィリピン本土にも拡大する可能性がある。

緊張の連鎖に懸念の声も

ただ、安保協力を進める日本側にも慎重な意見がある。外務省関係者は「東南アジアとの連携は必要だが、中国の反発を招き、かえって現地の緊張を高めるリスクもある」と話す。

中国メディアでは日本を強く非難する論調が目立ち、SNS上でも「日本は再び軍国主義を目指すのか」など、過去の歴史を引き合いに出した投稿が相次いでいる。中には「日本人はまたアジアを侵略しようとしている」といった極端な反応も見られ、感情的な対立が拡大しかねない状況だ。

ネット上の反応

中国政府の発言に対し、SNS上ではさまざまな声が上がっている。

「中国の“徒党を組むな”って、自分が一番組織化してるんじゃ…」
「中国の“歴史的権利”っていつまで通用するのか?国際法は無視か」
「日本は米国の顔色をうかがうのではなく、自主防衛を確立すべき」
「このままだと戦争の前夜みたいだ。ASEAN諸国が板挟みになるのが心配」
「石破さん、うまく立ち回ってるけど火遊びはほどほどにしてほしい」

「対中けん制」か「地域安定」か、問われる外交バランス

今回の中国のけん制は、単なる警告ではなく、今後の地域秩序を左右する外交戦の序章ともいえる。日比両国にとっては、中国の圧力に屈することなく、主権と国際秩序を守る覚悟が問われる一方、対話の道も閉ざしてはならない。

日本政府は「地域の平和と安定のための協力」と位置づけているが、現地の緊張が高まる中で、バランス感覚ある外交がますます求められている。

中国、日本とフィリピンをけん制 安保協力で「徒党組むな」

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