富士山で中国人大学生が1週間に2度救助 オーバーツーリズムが招く登山リスクとモラル崩壊

富士山から続けて救助

日本のシンボル、富士山で信じられない事態が起きた。4月末、東京都内に住む中国人の男子大学生が、わずか1週間のうちに2度も救助されるという騒ぎを起こした。

最初の救助は4月22日。夏以外は危険が増す富士山で、彼はアイゼン(登山用スパイク)を失い、下山できなくなったところをヘリで救助された。

そして数日後、今度は携帯電話を取りに再び単独登山を強行。案の定、8合目付近で高山病のような症状を訴え、またしてもヘリコプターで運び出されることになった。

幸い、本人に大きな怪我はなかったという。しかし、問題は彼の無謀な行動だけではない。その背景には、今、富士山が抱える“オーバーツーリズム”という深刻な問題が透けて見える。

オーバーツーリズムがもたらす安全リスク

富士山の登山シーズンは、7月上旬から9月上旬に限られる。それ以外の時期、登山道は雪や氷で覆われ、山小屋もトイレも閉鎖され、まともな救護体制すらない。それでも、SNS映えを狙った無謀な外国人観光客や、情報不足の登山者が後を絶たない。

実際、昨年(2024年)の富士山での死亡事故は過去最多を記録。救助要請も年々増加しており、地元の警察や消防、山岳救助隊への負担は限界に近づいている。

今回のように、本人の軽率な行動で救助活動が繰り返されるケースが増えれば、現場の隊員たちの命まで危険にさらしかねない。登山の自由は尊重されるべきだが、それには最低限の責任感が伴うべきだろう。

世界に広がる批判と怒り

今回のニュースは、日本国内だけでなく、中国でも大きな反響を呼んだ。中国版X(旧Weibo)には、「救助費用は全額請求すべきだ」「恥を知れ」といった辛辣なコメントが相次いだ。

日本でも、「富士山に登るならルールを守れ」「救助費用を本人負担にする制度が必要だ」といった声が広がっている。著名な登山家も、「救助隊はこの男の命を救ったが、彼の常識までは救えなかった」と厳しく批判している。

救助は人道的な行為だ。だが、登山者のモラルが欠如すれば、救う側の善意を食いつぶすことになる。
今回の一件は、そうした危機感を改めて突きつけた。

富士山を守るために必要なこと

山梨県では、昨年から登山道への入山制限を導入し、吉田口ルートでは1日あたり4000人までに人数を絞った。また、今年(2025年)夏からは、主要4ルートすべてで入山料4000円を徴収する予定だ。

これらの規制は一定の効果を上げているが、それだけでは十分ではない。問題は、規制をすり抜ける登山者や、危険性を認識していない観光客への啓発だ。多言語対応のルール周知、事前講習の義務化、さらに悪質なケースへの救助費用請求制度など、より踏み込んだ対策が求められている。

オーバーツーリズムのツケ

今回、富士山で起きた「1週間に2度の救助劇」は、オーバーツーリズムの弊害そのものだ。
美しい景観を守り、登山文化を次世代へつなぐためにも、「誰でも自由に登れる富士山」ではもういられない。

富士山はただの観光地ではない。自然の脅威と隣り合わせの、敬意をもって挑むべき聖地だ。この当たり前の意識を、今一度、登山者全員が胸に刻むべき時が来ている。

富士山から1週間に2度救助された男性

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