
日本移住で大学まで学費無料?中国で密かに広がる“教育支援”悪用の動き
厚生労働省の統計によれば、昨年の日本の出生数は68万6000人と過去最低を記録し、1899年の統計開始以来初めて70万人を割り込んだ。少子化の進行は加速しており、政府は教育無償化の拡大など子育て支援策を相次ぎ打ち出している。同時に、労働力不足を補う目的で外国人労働者の受け入れにも積極的で、ビザや永住資格の条件緩和により在留外国人数は増加を続け、今年中には400万人を超える見通しだ。
しかし、この二つの政策が意図せず組み合わさり、「教育無償化」と「移民受け入れ」を利用した“日本移住スキーム”が一部で広まっているという。
SNSで拡散される「大学まで無料」の誘い文句
中国のSNS「小紅書(Red Note)」などでは、移住を仲介するブローカーが「日本に移住すれば大学まで学費無料」「東京大学で無料で学士号取得までの道」などと投稿し、移住希望者を募っている。
中国出身で7年以上にわたり約100人の移住を手助けしてきたという宗仁平(仮名・50代)氏も、そのひとりだ。彼は在留資格取得の容易さや円安による生活コストの低下を理由に、日本移住の魅力を語り、こう断言する。
不正ではなく、法律に基づいた手続きで修学支援を受けられる
こうした言葉が、経済的に欧米留学が難しい中国の中間層に強く響いている。
本当に大学まで無料になるのか
日本の「高等教育の修学支援新制度」は2020年度から導入され、住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯の学生を対象に、授業料や入学金の免除、給付型奨学金の支給を行っている。2024年度には対象が拡大され、多子世帯や理工農系学部の私立大学生も支援を受けられるようになった。
さらに2025年度からは、子どもが3人以上いる多子世帯であれば所得制限が撤廃され、国公立大学で年間約53.6万円、私立大学で年間約70万円まで授業料が免除される。入学金も一定額が支給される。ただし、全額無償になるわけではなく、授業料が支援額を超えれば差額は自己負担だ。また、扶養する子どもが3人未満になった時点で支援は打ち切られる。
制度の“隙間”と誤解
問題は、この制度があたかも「誰でも移住すれば大学まで無料になる」と解釈されている点だ。実際には対象となる大学は限られ、支援を受けるには厳密な審査がある。多子世帯であっても、扶養関係や収入状況をマイナンバー制度を通じて確認され、不正は困難だ。
しかし、SNSや口頭での勧誘ではこうした条件が省かれ、「合法的に学費をゼロにできる」という甘いイメージだけが独り歩きしている。背景には円安で生活費が抑えられること、在留資格の緩和で来日ハードルが下がったことがある。
制度悪用への懸念と行政の対応
教育支援は本来、日本国内の子育て世帯を支えるための政策である。それが移住促進の材料として使われれば、制度の趣旨が損なわれかねない。行政関係者の間では、こうした移住目的の支援利用が増えれば、財政負担が膨らみ、制度見直しが必要になる可能性があるとの声も出ている。
今後、外国人受け入れ拡大と教育支援制度の両立には、制度の厳格な運用と、誤解を招かない広報が不可欠だ。移住希望者側も、公的機関や専門家を通じて正確な情報を確認し、安易にブローカーの誘いに乗らないことが求められる。
SNSの反応
「日本の制度は日本国民のためのものであってほしい」
「条件を知らない人が多すぎる」
「こういう使われ方を想定してないはず」
「本当に無償になる人はごく一部」
「制度の趣旨を守ってほしい」