
石破政権に「ネット言論統制」疑惑 削除要請の根拠示さず批判拡大
参院選を終えたばかりの自民党・石破政権が、SNSやネット上での批判的情報に対し“言論統制”を行っているのではないか――そんな疑念が野党や有識者の間で強まっている。
発端は、与党幹部や首相周辺が主張する「外国勢力による選挙介入」だ。政府は、参院選期間中に不自然な情報拡散があったとして、SNS事業者にアカウント凍結や投稿削除を要請した可能性が指摘されている。しかし、その対象や判断基準、削除の経緯について、政府は明確な説明を避けている。
「親ロシア」認定サイトを名指し しかし証拠は不透明
矢面に立たされたのが、「ジャパンニュースナビ」と呼ばれるニュースまとめサイトだ。複数の与党関係者は、このサイトや関連X(旧ツイッター)アカウントが、ロシアの国営メディア記事を引用しつつ、石破首相や外相らへの批判を繰り返していたと問題視。米シンクタンクが一部アカウントを「親ロシア」と分類していたこともあり、政府は外国勢力の影響を受けた可能性があると見ている。
だが、サイト運営者は取材に対し、「個人が運営するだけのまとめサイトで、外国勢力との関わりは一切ない」と全面否定。引用記事のうちスプートニクはごく一部であり、今回の騒動は「政治家による陰謀であり、明らかな言論封殺だ」と強く批判している。
削除要請の「消し込み」発言が火に油
疑惑に拍車をかけたのが、元デジタル相の平井卓也氏による「我々、相当『消し込み』には行ってますからね」という発言だ。インターネット番組でのこの言葉は、政府や与党が批判的な投稿を削除させている証拠ではないかとの憶測を呼び、ネット上で炎上した。
現職の平将明デジタル相は、「一部アカウントの凍結は政府が直接行うことはない」と否定しつつも、警察や消費者庁などが詐欺や犯罪に関わるアカウント削除を要請している事実には触れた。しかし、今回の選挙期間中にどのような基準で削除要請が行われたのかは、依然として不明のままだ。
説明責任なき“選挙介入”対策
問題は、政府が「外国勢力の影響」を強調する一方、その根拠や証拠を示さずに規制を進めようとしている点だ。もし外国からの介入が事実であれば、その証拠を国民に提示することは当然の責務であり、それを怠れば単なる政権批判の封じ込めと見なされても仕方がない。
参政党の塩入清香議員はテレビ番組で、「SNS上で自分がロシアのスパイだと書かれたが、もし本当にそうならロシアメディアに出演するだろうか」と皮肉交じりに反論。党代表の神谷宗幣氏も国会で「政府が“選挙介入”を口実にSNS規制を強化すれば、言論統制につながる」と警告した。
国民の信頼を守るために
今回の件で浮き彫りになったのは、ネット上の言論を巡る政府の透明性不足だ。批判的意見や不都合な情報を「外国勢力の影響」として排除する前に、その真偽を明らかにする説明責任を果たすべきだろう。そうでなければ、石破政権は“外国勢力対策”の名を借りた言論統制を行っているとの批判から逃れられない。
民主主義は多様な意見があってこそ成り立つ。アカウント削除や投稿“消し込み”の事実があるのなら、その理由と証拠を明確に示し、国民が納得できる形で説明することが急務だ。そうでなければ、政府自らが国民の言論空間を狭め、信頼を失うことになる。