日本、ヨルダンの水不足解決に向け870万ドル(約13.7億円)の無償資金協力

日本政府は、ヨルダン南部のマアン県における給水システムの効率化と水資源管理の強化を目的として、870万ドル(約13億6,972万8,000円)の無償資金協力を提供する協定に署名しました。この協定は、2025年2月23日にアンマンで行われ、ヨルダンの計画・国際協力大臣ゼイナ・トゥカン氏と駐ヨルダン日本大使の浅利英樹氏が署名しました。また、国際協力機構(JICA)ヨルダン事務所の首席代表である森畑真吾氏も、水利大臣ラエド・アブ・スード氏の立会いの下、別の無償供与協定書に署名しました。

SCADAシステム導入による給水管理の効率化

このプロジェクトの中心となるのは、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)システムの導入です。SCADAシステムは、センサーや機器を使用して給水システムをリアルタイムで監視・制御するもので、これによりマアン県の給水施設の運用と管理の効率性が大幅に向上すると期待されています。具体的には、9つの給水区においてSCADAシステムの導入とポンプの更新が行われ、正確な給水状況のモニタリングと適切な水道施設の運転管理体制の構築が図られます。

無収水率の改善と給水サービスの向上

ヨルダン南部3県(マアン県、カラク県、タフィーラ県)では、水・灌漑省管轄のヨルダン水道庁が直轄で水道事業を運営していますが、運営管理の能力不足等の理由から間欠給水になっており、給水水質など給水サービスのレベルが低下しています。このため、JICAは「南部地域無収水対策能力強化プロジェクト」を通じて、これらの地域の無収水対策能力の強化を支援しています。SCADAシステムの導入は、同県の無収水率の改善と給水サービスの向上のためには急務となっています。

日本とヨルダンの協力関係

計画・国際協力大臣のゼイナ・トゥカン氏は、日本の継続的な支援に感謝の意を表し、この協力がヨルダンの経済近代化ビジョンと一致していることを強調しました。また、ヨルダンと日本の強固な二国間関係と、さまざまな分野での協力拡大に向けた両国の共通の取り組みを強調しました。駐ヨルダン日本大使の浅利英樹氏は、資金援助や技術協力プログラムを通じてヨルダンを支援するという日本の決意を改めて表明し、これらの取り組みが同国の水部門の強化に役立つと指摘しました。また、ヨルダンを経済・政治改革の地域モデルとして称賛しました。

JICAヨルダン事務所の首席代表である森畑真吾氏は、特にヨルダンが世界で最も水不足に悩む国の一つであることを踏まえ、このプロジェクトの重要性を強調しました。また、JICAは現在、南部の県における水損失管理を強化するための技術協力プロジェクトを実施しており、技術者や技能者の能力開発に重点的に取り組んでいると述べました。

このプロジェクトは、マアン県の給水施設の運用と管理の効率性を改善し、南部地域における給水サービスを強化するとともに、水の損失削減に取り組むことを目的としています。具体的には、SCADAシステムの導入により、リアルタイムでの正確な給水状況のモニタリングが可能となり、適切な水道施設の運転管理体制が構築されます。これにより、現在67.1%とされる無収水率が約30%まで減少することが期待されています。

ヨルダンは世界で最も水資源が乏しい国の一つであり、特に南部地域では水不足が深刻な問題となっています。同国の水・灌漑省によると、国内14の主要ダムのうち3つは既に空の状態であり、他のダムも貯水量が危険な水準に達しています。このような状況下で、水資源の効率的な管理と損失削減は喫緊の課題となっています。

今回の日本の支援は、ヨルダンの水問題解決に向けた重要な一歩となるでしょう。SCADAシステムの導入と関連するインフラの整備により、マアン県をはじめとする南部地域の住民は、より安定した高品質の水供給を享受できるようになると期待されています。また、この協力は日本とヨルダンの友好関係をさらに深め、他の分野での協力拡大にもつながるでしょう。

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