「法律に従っていては世界は救えない」グレタ・トゥンベリ、拘束8回でも貫く信念と国際社会への訴え

法の軽視は正義ではない グレタ・トゥンベリ氏「8回拘束」に広がる疑問の声

スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリ氏(22)が、ガザ支援船に乗船し、イスラエル軍により拿捕・送還された。彼女にとって今回が8回目の拘束となるが、その活動の是非をめぐる議論が欧州内外で再燃している。

「法律に従っていては世界を救えない。ルールは変わらなければならない」

そう語るグレタ氏は、自身の抗議行動を「正義のための市民的不服従」だと主張する。しかし、法のルールを軽んじてまで行う行動は、果たして社会にとって正しいと言えるのか。

繰り返される「拘束」という名の違法行為

彼女の過去2年余りの活動を振り返ると、その多くが公道の封鎖、施設の立ち入り妨害、警察命令の無視など、明確な法令違反を伴っている。以下は主な拘束履歴である。

年月国・地域内容と拘束経緯
2023年1月ドイツ西部炭鉱開発反対デモで危険区域に侵入。警察命令に従わず拘束
2023年3月ノルウェー・オスロ政府機関の立ち入りを妨害し、一時拘束される
2023年6月スウェーデン・マルメ石油タンカーを妨害、退去命令を無視して起訴・罰金刑
2023年10月英国エネルギー関連会議を妨害し拘束
2024年4月オランダ幹線道路を封鎖、公共交通に重大な支障を与える
2024年9月デンマークガザ戦闘に反対するデモで警察命令を拒否
2024年10月ベルギー座り込みにより施設の業務を妨害
2025年6月ガザ沖国際海域を航行する支援船が拿捕され、送還される

グレタ氏の行動は一見すると「正義感に基づく勇気ある行為」に映るかもしれない。しかし、その実態は、公共の秩序を乱し、法の下に暮らす市民に不安を与えるものだ。彼女が無視する「法律」とは、民主主義社会の根幹であり、個々の信念で勝手に破ってよいものではない。

「正義のための違法行為」は許されるのか

気候変動や人権問題に関心を寄せること自体は歓迎すべきだが、それを理由にして法律を軽視することが許されてよいはずがない。実際、彼女の活動には欧州各国で疑問の声も強まっている。

気候変動の重要性は理解できるが、法律を破って社会を混乱させることは、ただの迷惑行為だ

正義を盾にして他人の生活や公共の機能を妨げることに納得できない

法を無視する運動は、結果的に市民からの支持を失っていくだけ

このように、グレタ氏の「不服従」は、社会全体にとってのリスクでもある。彼女の行動が、逆に環境運動や人道支援への理解を妨げているとの指摘も多い。

法治の精神こそ、民主主義を支える柱

民主主義のもとで私たちは、正当な手続きや議論を通じて社会を変える仕組みを持っている。過激な抗議やルールの破壊ではなく、対話と制度改革によってこそ、持続可能な未来は実現できる。

「ルールは変わらなければならない」

その通りだ。しかし、ルールを変えるには選挙や立法、政策提言といった合法的な手段こそが、社会全体の合意を得る唯一の方法である。自らの主張を押し通すために違法行為を繰り返すのであれば、それはもはや「正義」ではなく、法の支配を否定する危険な行動に他ならない。

ガザ支援船も「正義」の名を借りた政治的パフォーマンスか

今回のガザ沖での支援船拿捕においても、イスラエル側は「安全保障上の懸念」として正当性を主張しており、航路や物資の検査は国際法に則って行われている。一方、グレタ氏らの側は、あくまで人道支援と訴えるが、その実態は抗議目的の政治的パフォーマンスとの見方もある。

国際社会では、支援活動においてもルールが存在し、秩序を守る必要がある。それを無視して抗議を正当化する行為は、かえって現地の安定や支援の信頼性を損なう危険がある。

    社会を変えたいという情熱そのものは尊い。しかし、その手段として「法を破ること」が容認されるのであれば、それは秩序ある民主社会の土台を揺るがしかねない。正義を語るなら、まずはルールの中で闘う責任があるのではないだろうか。

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