風力発電の課題とは?事故と低効率が問う再生可能エネルギーの現実

壊れた風力発電

【風力発電は本当に持続可能か?】事故多発と低効率で問われる再生可能エネルギーの現実

日本各地で導入が進む風力発電。しかし、その裏では、効率の低さや事故の多発といった深刻な課題が見え隠れしている。2025年5月、秋田市で発生した風力発電の羽根落下事故は、その危うさを改めて浮き彫りにした。

羽根落下事故で男性死亡 全国で相次ぐトラブル

5月2日、秋田市の海沿いの公園で、風車の羽根が突如落下。近くにいた81歳の男性が倒れているのが見つかり、間もなく死亡が確認された。男性は「タラの芽を採りに行く」と言って自転車で外出した直後だったという。現場付近は住民の散歩コースでもあり、「風車の下を歩くのは怖かった」と話す近隣住民の声もある。

風力発電に関わる事故は決して珍しくない。経済産業省のまとめによると、過去5年間で全国の風力発電設備に関連する事故は約200件に上り、そのうち約30件が羽根の破損によるものだった。羽根の先端は回転時に時速300キロに達し、砂や雨にさらされるため、損傷が生じやすい。放置すれば、今回のような落下事故につながる恐れがある。

風がなければ発電できない? 不安定な出力

風力発電は、太陽光や水力と並ぶ再生可能エネルギーとされるが、最大の弱点は「風まかせ」であること。風が吹かなければ発電はゼロに近く、逆に暴風が吹き荒れれば安全のため停止せざるを得ない。こうした不安定な出力は、安定供給が前提の電力網にとっては大きなリスクとなる。

実際、風力発電の設備利用率(稼働率)は平均で20%台にとどまる。つまり、100%中の2割程度しか実際には発電できていないのが現実だ。

設置も維持も高コスト 元は取れるのか

さらに問題となるのがコストだ。風力発電設備の設置には1kWあたり平均22万円がかかり、年間のメンテナンス費も1kWあたり0.6万円程度とされる。これに加え、老朽化した設備の交換や、倒壊・破損時の対応コストも馬鹿にならない。

海外製の大型風車を使っているケースも多く、部品の取り寄せや保守点検にも時間と費用がかかる。採算性の低さが、地域にとって持続可能な投資といえるのかどうか、疑問の声もあがっている。

政策で推進されるが…技術と安全体制は追いつかず

政府は「エネルギー基本計画」において、風力発電の電源構成比を現行の約1%から、2040年には4~8%に拡大する目標を掲げている。しかし、今回の事故のように、安全性への不安が拭えないまま設備だけが増えていくのでは、住民の信頼は得られない。

早稲田大学の小野田弘士教授(システムエネルギー工学)は「風車はどんどん大型化しており、事故が起きたときの被害も拡大する。国も事業者任せにせず、定期検査の徹底や事故原因の公開を進めるべきだ」と指摘する。

持続可能なエネルギー社会のために

温暖化対策として再生可能エネルギーの導入は急務だが、「安全」「安定」「経済性」の3条件を満たさなければ意味がない。風力発電は一見クリーンに見えて、その実、多くの問題を抱えている。

今後のエネルギー政策では、こうした現場の実態と技術的な限界を直視し、真に持続可能な道を探る必要がある。再生可能エネルギーへの過信は、時に命を奪う現実につながるということを、私たちは忘れてはならない。

関連記事

おすすめ記事

  1. 2025年以降に予定されている増税・負担増のリストを作りました。 以下は画像を基に作成した「…
  2. 消費税は、日本の主要な税収源の一つとして位置づけられています。 しかし、その運用方法には多く…
  3. 日本を訪れる外国人観光客の数は年々増加しており、特に中国人観光客の訪日人数は目覚ましく、昨年は70…
  4. 減税は日本経済の処方箋になるか? ――インフレ恐怖と古い経済学から脱却を 私たちの…
  5. 米国、輸入自動車に25%の関税を正式発表 米国のドナルド・トランプ大統領は3月26日、輸入自…

新着記事

  1. 住宅地と研究所の窓
    日本にエボラを?致死性ウイルス輸入の裏側に広がる不安 「オリンピック対策」の名目で危険ウイル…
  2. 壊れた風力発電
    【風力発電は本当に持続可能か?】事故多発と低効率で問われる再生可能エネルギーの現実 日本各地…
  3. 中国製EVに潜む“情報漏洩リスク” 英国で警戒強まる ~防衛産業が社員に「スマホ接続しないで…
  4. 【花粉症対策に革命】スギ花粉9割減も夢じゃない?1日2,320億円の損失を救う“あの技術” …
  5. 日米通商交渉で自動車関税を巡り平行線 米は交渉対象外と主張、日本は反発 2025年5月1日に…
  6. 米国が自動車部品にも追加関税 国内移転狙い、日本への影響広がる トランプ米政権は現地時間の5…
  7. 米上院でロシア追加制裁法案を提出 ウクライナ和平交渉促進へ、超党派で圧力強化 ロシアに…
  8. 【密漁“攻略”がSNSで拡散】中国人観光客による潮干狩り密漁、なぜ繰り返されるのか? 春の訪…
  9. 台湾LNG基地を標的に訓練か】中国軍が4月に実施した大規模演習を専門家が分析「インフラ攻撃能力が向…
  10. 【中国が日比安保協力をけん制】石破首相とマルコス大統領の連携に警戒強める 中国政府が、日本と…
ページ上部へ戻る