
【中国製品の大量流入に懸念高まる】ブラジル政府が緊急対策を検討 背景にトランプ関税
ブラジル政府が、中国製品の急激な流入に歯止めをかけるための緊急防護措置の導入を本格的に検討し始めた。背景には、米トランプ政権が4月に発表した大規模な関税強化政策がある。行き場を失った中国製品が南米諸国へ流れ込む構図が鮮明になってきた。
中国製品がブラジル市場を圧迫
問題が顕在化したのはここ最近のことだ。アメリカが中国製品に最大145%という異例の高関税をかけたことで、中国の輸出業者は新たな販路を求めて動き出した。そのターゲットの一つが、経済成長が続くブラジル市場だ。
フォーリャ紙など複数の現地メディアによると、すでに中国製の鉄鋼や繊維、電子機器などがこれまで以上のペースでブラジルに流れ込んでおり、現地企業は価格競争にさらされ、悲鳴を上げている。
従来の反ダンピング措置では追いつかず
こうした状況を受け、開発・商工貿易省(MDIC)は「緊急防護システム」の導入を検討中だ。これは特定の輸入品に対し、即時に関税や数量制限などを発動できる仕組みで、WTOルールにも準じた制度。従来の反ダンピング調査は手続きが煩雑で数カ月を要するため、「現場の危機に間に合わない」との指摘が相次いでいた。
同省の高官は「アメリカ市場を失った中国製品が、短期間でブラジルに流れ込んでくる。今の制度では守りきれない」と述べ、対策の必要性を訴えている。
国内の声「このままでは中小企業が潰れる」
ブラジル国内ではすでに危機感が広がっている。特に中小企業からは、「安すぎる中国製品に勝てない」「このままでは地域経済が壊滅する」といった悲鳴が聞こえる。
一方で、消費者の立場からは「値上がりは困る」「中国製品は選択肢の一つ」といった声もある。政府は、産業保護と物価安定という二つの相反する課題にどう折り合いをつけるか、難しい舵取りを迫られている。
「ブラジルの靴産業が壊滅するかもしれない。政府は何をしているんだ」
— ブラジル南部・靴工場経営者(Xより)
「中国製品のおかげで安く買えるのに、関税で高くなるなら困る」
— サンパウロ在住の主婦(Facebookコメント)
国際協調と内需強化の両立なるか
MDICは今後、緊急措置の導入に向けて国内法の見直しや制度設計を急ぐ方針だ。また、国際社会と連携しつつ、WTOルールに反しない形での対抗策を検討している。と同時に、長期的にはブラジル国内の製造業の競争力強化と輸出拡大を目指す成長戦略の再構築も課題となる。
米中の貿易摩擦が生んだ「副作用」が、今まさに南米大陸を揺るがしている。ブラジル政府は、自由貿易と産業保護のはざまで、難しい選択を迫られている。
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