中国、「共同管理」で尖閣浸食へ 主権を脅かすグレーゾーン戦術

尖閣諸島

日本固有の領土である尖閣諸島を巡って、中国の動きが再び緊張を高めている。米戦略研究家のトシ・ヨシハラ氏は、中国が日本の施政権を否定し、「共同管理」という名のもとで実効支配を既成事実化しようとしていると警告した。すでに海警局の艦艇が頻繁に周辺海域に出没し、次なる段階として、民兵の上陸すら視野に入れているという。

見えにくい侵略、「グレーゾーン戦術」

中国が仕掛けるのは、いわゆる「グレーゾーン戦術」だ。これは軍事衝突に至ることなく、しかし確実に相手国の主権を侵食していく手法。海警局の艦艇派遣、そして漁民に偽装した「海上民兵」の投入は、明確な武力行使と判断しにくいため、国際社会も日米同盟も反応に慎重にならざるを得ない。

ヨシハラ氏はこの戦術を「日米安保条約の適用を曖昧にさせる狙いがある」と分析する。つまり、日本側が毅然とした対応を取れなければ、「尖閣は係争地である」という中国側の主張が国際社会で既成事実として扱われかねないのだ。

海上民兵という“隠れた武力”

海上民兵の存在は、中国のもう一つの特徴的な戦術だ。民間の漁民を装いながら、実際には政府の命令で動く準軍事組織である。南シナ海ではすでに実戦投入されており、2016年にはフィリピンの排他的経済水域で約200隻が集結。これにより国際的非難が高まった経緯もある。

日本周辺でも同様の動きが進んでいる。2016年夏には、尖閣周辺に200隻を超える中国漁船が出没し、日本の海上保安庁が対応に追われた。今後、中国がこうした民兵を「偶発的な上陸」として送り込む可能性は、決してゼロではない。

日本政府の立場と課題

日本政府は尖閣諸島が「歴史的にも国際法上も日本固有の領土」との立場を堅持している。外務省も「領有権問題は存在しない」と一貫して主張しているが、現実の海上では中国の動きが着実に増している。

こうした中で、岸田政権は防衛力の抜本的強化に取り組んでおり、南西諸島への自衛隊配備や、米軍との共同訓練も進んでいる。しかし、「有事の前段階」であるグレーゾーンへの対処能力については、まだまだ不安が残る。

米国の対応と国際連携

一方、米国も中国の海洋進出を強く警戒している。特にバイデン政権は、沿岸警備隊の存在感を高める形で、太平洋諸国との関係強化を図っている。オーストラリア北部には老朽化した警備船「ハリエット・レーン」を配置し、小国への訓練支援や法執行の連携を強めている。

これは中国が20隻以上の旧コルベット艦を改造し、海警局の装備として展開している動きに対抗する措置だ。日米豪を軸とした連携の必要性は今後ますます高まる。

SNS上の反応――「主権意識が足りない」との声も

今回の「共同管理案」の報道を受けて、SNSでも激しい議論が起きている。X(旧Twitter)上では、

「中国が『共同管理』なんて言い出す時点で、日本の実効支配が脅かされている証拠だ。なぜ政府はもっと強く否定しないのか」

「海上民兵の上陸を許せば、次は建造物が建てられ、次第に基地化される。南シナ海の再現を許してはならない」

といった危機感あふれる投稿が相次いでいる。また、若年層からは、

「高校の授業では『日本の領土』と習ったのに、現実には中国に遠慮している印象。主権って、そんなにあやふやなの?」

という声も上がっており、教育と現実の乖離への疑問も根強い。

国際社会への発信と国内の覚悟

尖閣諸島を巡る問題は、日本一国の領土問題にとどまらない。法の支配、航行の自由、主権国家の原則といった国際秩序の基本的価値が問われている。

その意味で、政府には今こそ「中国の行動は断じて容認できない」と、明確に内外に示すことが求められている。外交交渉と防衛態勢の両面から、現状変更を試みる中国に対抗する意志と能力が、日本の信頼と尊厳を守る鍵となる。

中国、尖閣「共同管理宣言」準備 民兵の上陸も検討

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