
再エネ賦課金、過去最高へ 月1600円超の上乗せ負担に「国民の限界超えた」と専門家が警鐘
太陽光や風力といった再生可能エネルギーの普及を支えるため、私たちの電気料金に上乗せされている「再エネ賦課金」。その額が、来年度もまた引き上げられることになった。2025年度の標準家庭(1カ月400キロワット時使用)で見ると、月あたりおよそ1,600円、年間では1万9,000円超の追加負担だ。制度が始まった2012年度以降で過去最高となり、電気料金の1割を超える水準にまで達している。
このままでは、再エネ普及のための“応援金”が、家計の重荷として耐えがたいものになりかねない。専門家からは「すでに国民の許容範囲を超えている」との声も上がっている。
負担増の背景にあるのは「FIT」
この再エネ賦課金は、再生可能エネルギーを20年間といった長期にわたって、電力会社が固定価格で買い取る「固定価格買取制度(FIT)」に基づいている。電力会社が高値で買い取った電気のコストと、実際に市場で売れた価格との差額を、最終的には全国の電気利用者が肩代わりする仕組みだ。
経済産業省によれば、2025年度の賦課金単価は1キロワット時あたり3.98円。前年度より0.49円高くなり、5月分の検針から反映される。つまり、わたしたちの電気代は、月ベースで196円、年間で2,352円も増える計算だ。
導入当初の単価はわずか0.22円だったが、そこから13年で実に15倍近くにまで跳ね上がった。再エネの導入量が右肩上がりで増えてきたことが、賦課金の上昇を後押ししてきた。
「安くなったはずの再エネ」でも減らない国民負担
太陽光パネルなどの価格は年々下がってきている。たとえば、FIT導入初期の2012年度には、事業用太陽光の買い取り価格は1キロワット時あたり40円と非常に高かったが、今では10円前後まで下がっている。
それでも国民の負担が減らないのは、制度の構造上、過去に契約された「高値買い取り」の案件が20年間続くためだ。そのため、賦課金の総額は2032年度ごろまでは増え続ける見通しとなっている。
専門家「すでに限界。費用対効果を見直すべき」
電力中央研究所の朝野賢司・副研究参事は、今後さらに賦課金の単価が上がり、30年度までに4.5円に達する可能性もあると分析する。これは、月額で約1,800円もの上乗せになる計算だ。
朝野氏らの2019年の調査によると、再エネの普及に理解を示す消費者は全体の約66%いたものの、そのうちの約7割が「電気料金の5%以内までしか負担したくない」と回答していた。現在はすでに1割を超えており、「国民の感覚とは乖離してきている」と同氏は警鐘を鳴らす。
さらに、2012年から2025年度までに賦課金で国民が支払う総額は、累計で25兆円規模にのぼるという。これは、二酸化炭素(CO2)を1トン削減するためのコスト換算で3万円以上になる。決して効率が良いとは言えない。
再エネは「理想」か、それとも「現実」か
再エネの推進は、東日本大震災後のエネルギー政策の柱となってきた。原発事故の教訓から、自然エネルギーに舵を切ったこと自体は間違っていなかったかもしれない。
しかし、振り返ってみれば、制度初期の「買い取り価格が高すぎた」との反省もある。業界関係者からは「最初の40円はやりすぎだった。後戻りできない制度設計が問題だった」との声も漏れる。
加えて、再エネの拡大に伴って、太陽光パネルの大量導入が中国メーカーに恩恵を与えたり、山林の乱開発による景観破壊や土砂災害の懸念も各地で広がっている。地元住民から反発の声が上がる事例も珍しくなくなった。
賦課金廃止論と、国民的議論の必要性
こうした中で、野党の国民民主党などからは、再エネ賦課金の凍結や見直しを求める声も上がっている。一方、経産省側は「賦課金をなくしても、再エネ導入に必要な費用は他の形で国民が負担することになる」として慎重な姿勢を崩していない。
将来的に賦課金は減っていくと見られているが、CO2排出量に応じた新たな負担金制度(いわゆるカーボンプライシング)なども検討されており、結局は別の形で国民負担が残る可能性が高い。
朝野氏は「脱炭素に向けた政策全体の中で、費用対効果を冷静に見直すことが必要だ。負担が避けられないのであれば、それを社会全体でどう分かち合うかという議論をすべき時期に来ている」と話す。
再エネを「理想の未来」にとどめず、持続可能な現実にしていくためには、私たち自身がエネルギーの“使い方”と“支え方”をもう一度見直す必要がありそうだ。