
インドネシアで、中国産と見られる米にポリ塩化ビニール(PVC)製のプラスチック米が混入していたことが発覚し、国民の怒りが広がっています。米はインドネシア国民の主食であり、年間一人当たり約150キログラムを消費するとされています。この事件は、食の安全性への懸念を引き起こし、同国の米政策の見直しを促す契機となっています。
プラスチック米混入事件の詳細
現地報道によれば、問題の米は中国から輸入されたもので、PVCで作られた米粒状の物質が混入していたとされています。西ジャワ州ブカシで、この米を使用したお粥を食べた客が体調不良を訴えたことが発端となりました。中国では、ジャガイモなどの粉末に合成樹脂を混ぜたプラスチック米が出回り、問題視されています。これまでにシンガポールやマレーシアでもプラスチック米が話題になりましたが、実際の被害は報告されていませんでした。インドネシア政府は、流通ルートの特定や、こうしたPVC入りの米が販売された目的について、食品テロの可能性も含めて調査を進めています。また、中国政府にも協力を依頼しています。
世界の米需給状況
米国農務省(USDA)の統計によれば、2014~15年の米消費量は、中国が世界最多の1億4,800万トン、次いでインドが9,935万トン、インドネシアは3番目で3,860万トンとなっています。一方、同期間の米生産量(精米基準)を見ると、中国が1億4,400万トン、インドが1億250万トン、インドネシアは3,630万トンとなっています。中国は最大の米生産国であると同時に、最大の米輸入国でもあります。2011~12年にインドネシアを抑えて最大の米輸入国となって以来、輸入量を増加させており、2014~15年には450万トン、2015~16年には470万トンを輸入すると予測されています。これは、国内需要の増大に加え、アフリカなどへの輸出を通じて影響力を行使する目的もあると考えられています。
一方、2014~15年の米輸出国を見ると、最も多いのがタイで1,100万トン、次いでインドが980万トン、ベトナムが570万トンと続きます。米は、総生産量の約10分の1しか輸出されておらず、そのため価格の変動幅が大きいとされています。2007年には、米不足を予測したインドが輸出規制を開始し、それが中国、ベトナム、カンボジアなどへと拡大し、世界的な米価格の高騰を招きました。その後、中国は本格的な米輸入国へと転じました。
インドネシアの米政策と自給への取り組み
インドネシア政府は、これまでベトナムやタイからの米輸入を主としてきましたが、今回のプラスチック米騒動を受け、全輸入米の見直しを開始しました。地方では、国産米の消費を促進する動きも始まっています。ジョコ・ウィドド大統領は、米自給の実現を公約に掲げており、今回の騒動を契機に、米の生産拡大による完全自給を目指す流れが加速しそうです。
さらに、インドネシアは2025年に向けて、インドから100万トンの米を輸入する計画を検討しています。これは、主な収穫期までの供給を確保するための措置であり、同国の米生産量が前年より2.43%減少し、3,034万トンになると見込まれていることを受けたものです。また、食料自給を達成するために、2025年までに75万~100万ヘクタールの新たな水田を開発する計画も進行中です。
食の安全性と将来の課題
今回のプラスチック米混入事件は、インドネシア国民の食の安全性への意識を高め、政府の米政策の見直しを促す契機となりました。今後、インドネシアが米の完全自給を達成し、国民に安全で安定した食料供給を確保するためには、生産体制の強化や輸入管理の徹底が求められます。また、世界的な米需給の変動や気候変動による生産影響など、外的要因にも柔軟に対応できる体制の構築が重要です。
インドネシアの米政策の成功は、同国の食料安全保障だけでなく、地域全体の経済安定にも寄与することでしょう。今後の政府の取り組みに注目が集まります。