
米国エネルギー省は3月19日、ルイジアナ州で計画されている液化天然ガス(LNG)プロジェクトの輸出を正式に認可した。今回許可が下りたのは、米エネルギー企業「Venture Global LNG」が推進する「CP2 LNGプロジェクト」。このプロジェクトでは、日本の大手電力会社JERAと資源開発大手INPEXが長期供給契約を結んでおり、日本のエネルギー安定供給にも大きく関わる決定となる。
プロジェクトの概要
「CP2 LNGプロジェクト」は、ルイジアナ州キャメロン郡で計画されているLNGプラントで、年間約2000万トンのLNGを生産する予定だ。JERAとINPEXはそれぞれ年間約100万トンのLNGを20年間にわたって購入する契約を結んでいる。これにより、日本のエネルギー調達の多様化が進み、安定供給の確保につながると期待されている。
このプロジェクトは、エネルギー輸出を重視するトランプ政権の方針に沿ったもので、米国の「エネルギー優位性」戦略の一環として進められている。米国はすでに世界最大の石油・ガス生産国であり、LNG輸出の分野でも影響力を強めている。
日本企業の狙い
JERAは東京電力と中部電力が統合して設立した国内最大の発電会社であり、LNGの年間取扱量は約3000万~3500万トンに及ぶ。現在、JERAが輸入するLNGの約10%は米国産であり、今回の契約により、その割合がさらに高まる可能性がある。JERAは「エネルギー調達の選択肢を広げることで、価格変動のリスクを抑え、安定した電力供給につなげる」としている。
一方、INPEXは日本最大の資源開発企業で、世界各国でエネルギー開発を進めている。LNGの需要が高まる中で、長期契約を結ぶことで安定供給の確保を図る狙いがある。
LNG輸出再開の背景
今回の輸出認可の背景には、バイデン前政権時代のLNG輸出政策の見直しがある。バイデン政権は、気候変動や国家安全保障への影響を理由に、LNG輸出許可の審査を一時停止していた。しかし、トランプ政権は1月に審査の再開を命じる大統領令を発表し、エネルギー輸出の拡大を後押しした。エネルギー省は「輸出によって米国の経済的利益が高まり、同盟国や貿易相手国のエネルギー安全保障にも寄与する」としている。
環境への影響と課題
一方で、LNG輸出拡大に対して環境団体からは懸念の声も上がっている。LNGの生産・輸送過程ではメタンの漏出が問題視されており、温室効果ガスの排出増加につながる可能性が指摘されている。また、パイプラインや関連インフラの整備に伴う環境負荷も懸念される。こうした問題に対し、プロジェクト開発者や政府は環境影響評価を行い、排出削減策を講じる必要がある。
LNGは石炭や石油よりも二酸化炭素排出量が少なく、再生可能エネルギーへの移行を進める中で「移行期のエネルギー源」として注目されている。日本では脱炭素化を目指しつつも、安定した電力供給を維持するためにLNGの役割が引き続き重要とされている。
今回のLNG輸出認可と日本企業との契約は、米国と日本のエネルギー協力を深める契機となる。ただし、世界的なLNG市場の動向や価格変動、日本国内のエネルギー政策の変化もプロジェクトの行方を左右する要因となる。
環境負荷とエネルギー安定供給のバランスをどう取るのか。米国のLNG輸出が拡大する中で、日本も持続可能なエネルギー戦略をどう描くかが問われている。