全国旅行支援・県民割支援、1285億円未使用 会計検査院が指摘

新型コロナウイルス感染症の拡大により、観光業界は深刻な影響を受けました。そのため、政府は観光需要の喚起を目的とした「全国旅行支援」や「県民割支援」といった施策を実施しました。しかし、会計検査院の調査によれば、これらの施策に割り当てられた予算のうち、約1割に相当する1285億円が未使用のままであったことが明らかとなりました。

施策の概要と目的

「全国旅行支援」と「県民割支援」は、2021年から2023年にかけて、新型コロナウイルス感染症の影響で落ち込んだ旅行需要を喚起するために実施された国の補助事業です。これらの施策は、宿泊代などの旅行費用の一部を補助することで、観光業界の回復を支援することを目的としています。

予算の執行状況

会計検査院の調査によれば、これらの施策に割り当てられた予算総額は1兆1193億円であり、そのうち1285億円が未使用のままであったことが判明しました。特に、観光庁が各都道府県に配布した額の2割は、貸切バスでの団体旅行の費用に限り利用できる枠として設定されていました。しかし、この割合を設定する際に基にしたデータが、貸切バス以外の鉄道や航空機などを利用した旅行も含まれていたため、40都道府県で合わせて724億円の残額が発生していたと報告されています。

残額発生の背景

残額が発生した主な要因として、貸切バス以外の交通手段を利用した旅行者が多かったことが挙げられます。また、都道府県に割り振る額の算出方法に関する資料が適切に保存されていなかったことも、予算の適切な配分や使用状況の把握を難しくしていたと考えられます。

今後の対応と課題

会計検査院は、観光庁に対して、資料を適切に保存することや、合理的な基準で予算枠を定めることなどを求めています。これにより、今後の施策において、予算の適切な配分と使用が確保されることが期待されます。

施策の効果と評価

一方で、これらの施策が観光業界の回復にどの程度寄与したかについては、評価が分かれています。一部の報告では、宿泊料金の値上がりや「割引慣れ」などの懸念が指摘されています。また、ニッセイ基礎研究所のレポートでは、全国旅行支援の経済効果が限定的であった可能性が示唆されています。

「全国旅行支援」や「県民割支援」は、観光業界の回復を支援するための重要な施策であったものの、予算の未使用や効果の限定性といった課題が浮き彫りとなりました。今後は、これらの課題を踏まえ、より効果的な施策の実施と予算の適切な管理が求められます。

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