全従業員をリストラ通告「夢の電池」開発企業に異変 開発データ消失の恐れも
福井県の全樹脂電池メーカー、APB株式会社(以下、APB社)で、経営陣による全従業員への希望退職勧告と解雇予告が行われ、技術流出や開発データの消失といった深刻な問題が浮上しています。
APB社の創設と技術革新
APB社は、2018年に元日産自動車の技術者である堀江英明氏によって設立されました。堀江氏は、日産の量産型EV「リーフ」の車載用電池を開発した実績を持ち、APB社では全樹脂電池の量産化を目指していました。全樹脂電池は、従来の2倍の電気を蓄えることができ、発火や爆発のリスクが低いとされる次世代電池技術として注目されていました。この技術開発には、経済産業省の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から75億円の補助金が支出されていました。
経営陣によるリストラ通告と給与未払い
しかし、APB社では最近、経営陣から全従業員に対し、3月末までに希望退職を申し出なければ解雇するとの通告が行われました。従業員からは、給与の未払いが続いており、生活が困窮しているとの声が上がっています。未払いの状態が続く中、クラウドサービスの利用料金も支払われておらず、サービス停止により開発データや知的財産が失われる恐れがあるとの指摘もあります。
技術流出の懸念と国会での追及
さらに、APB社が保有する全樹脂電池の技術が海外、特に中国企業に流出するのではないかとの懸念が高まっています。2022年にAPB社の筆頭株主が変更され、その後、中国企業との接点が増加したとされています。2024年3月には、中国の大手通信機器メーカーの技術者らがAPB社の工場を視察したことも報告されています。これに対し、国会では有志の会の福島伸享衆院議員が、技術流出の可能性と安全保障上の懸念を指摘し、経済産業大臣に対して管理徹底を求める場面がありました。
経営陣の解任劇と告発
2024年6月、APB社の創業者である堀江氏は、取締役会で突然解任され、その後、経営陣による特別背任の疑いで刑事告発を行いました。告発の背景には、APB社の重要技術が海外に流出する危険性や、経営陣による不適切な株式売却があったとされています。特に、APB社の大株主である三洋化成工業から、TRIPLE-1がAPB社の株式を格安で取得した経緯が問題視されています。これらの行為が、APB社の技術や経営に深刻な影響を及ぼしているとされています。
APB社の現状と今後の展望
現在、APB社は経営難と技術流出の危機に直面しており、全従業員の解雇や開発データの消失といった深刻な問題を抱えています。これらの状況が、今後の全樹脂電池の商業化や、日本の電池産業全体にどのような影響を与えるかが注目されています。
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