
ガソリン暫定税率、2026年に廃止へ 自民が方針転換 臨時国会で法案成立の可能性
自民党が、ガソリン税の暫定税率を撤廃する法案について、8月1日から開かれる臨時国会での成立を視野に入れていることがわかった。これまで長らく維持されてきた暫定税率だが、7月の参議院選挙で与党が衆参両院で過半数を割り込んだことを受け、野党の要求に応じる形で見直しが進む見通しだ。
与党が譲歩 野党提出の法案を受け入れか
ガソリン税に上乗せされている暫定税率(1リットルあたり25.1円)は、かつての財政危機を背景に導入された一時的な措置だったが、事実上長年にわたり継続されてきた。今回の法案は、立憲民主党や維新の会、国民民主党、共産党など7つの野党が共同で提出したもので、通常国会では衆議院を通過したものの、当時は与党が多数を握る参議院で廃案となった。
しかし、参院選の結果、政治地図が大きく塗り替えられた。野党が数的優位を保つ今、政府・与党も法案を無視し続けることが難しくなっている。
自民党幹部は「民意を踏まえ、柔軟に対応する必要がある」と述べており、廃止に前向きな姿勢を示している。ただし、地方の税収への影響を懸念する声も強く、廃止時期については「2026年4月をめどとする案」が党内で浮上している。
補助金で価格抑制も 「トリガー条項」凍結のまま
現在、政府はガソリン価格の高騰対策として、1リットルあたり最大10円程度の補助金を支給しており、これにより消費者価格の上昇を一定程度抑えている。また、かつて存在した「トリガー条項」――一定価格を超えた場合に自動的に暫定税率を停止する制度――については、東日本大震災の復興財源確保を理由に凍結されたままとなっている。
一部では「このまま補助金で価格を調整しつつ、制度的に暫定税率をなくすことで、より分かりやすい税体系にすべきだ」との声も上がっている。
地域インフラへの影響 地方財源の行方は
一方で、ガソリン税の税収は、地方にとって貴重な財源となっている。道路の整備や除雪費用、橋の修繕など、日常生活に直結するインフラ支出に充てられており、「暫定税率分が消えることで、地方の行政サービスに支障が出かねない」との懸念もある。
特に、地方自治体の中には財政基盤が脆弱な地域も多く、代替財源の議論が進まないまま廃止が実行されれば、予算編成に大きな支障をきたすおそれがある。
自民党内では「段階的な減税」や「他の自動車関連税からの転用」など、代替策を模索しているが、利害が複雑に絡む問題だけに、調整には時間がかかると見られている。
物価対策か、環境政策か ガソリン税見直しのジレンマ
今回の暫定税率廃止は、家計の負担を軽減し、消費を促す狙いがある。ガソリン価格の高止まりが続く中、「1円でも安く給油したい」というドライバーの声は切実だ。物流業界や農業関係者からも「コストが少しでも下がれば助かる」との期待が寄せられている。
「このタイミングで税を下げる判断をしたのは評価できる」
「地方の道路や橋が維持できなくなるんじゃないかと心配」
「ガソリンを安くしてくれるのはありがたいけど、将来の負担が心配」
「補助金でしのぐより、制度そのものを見直す方が健全」
「環境への逆行じゃないか?電気自動車への流れと逆行してる気もする」
しかし一方で、環境保護や脱炭素を重視する立場からは「ガソリン価格が下がれば再び化石燃料に依存してしまう」との反対意見も出ている。脱炭素社会の実現を掲げる日本にとって、政策的な整合性が問われる局面とも言える。
今後の焦点:臨時国会で成立なるか
臨時国会は8月1日から5日までの5日間で予定されているが、法案提出があれば会期が延長される可能性もある。ただし、与野党の協議が難航した場合、法案の成立は秋以降に持ち越される可能性もある。
すでに立憲民主党は再提出に向けて準備を進めており、自民党も「世論の動向を見ながら決断する」としている。短期間のうちに制度設計から財源確保まで詰めることができるのかが、最大の焦点だ。
家計支援と制度改革の試金石に
ガソリン暫定税率の廃止は、単なる減税にとどまらず、日本の税制度や地域経済の在り方を問い直す大きな転換点となる。物価高騰への即効的な対応と、持続可能な公共インフラの両立という難題を前に、政府と国会はどのような答えを出すのか――。
注目の臨時国会が、間もなく始まる。