外国人住民1割超の27市区町村に 全国376万人が地場産業支える

日本における外国人住民の集中が急速に進んでいます。2025年1月1日時点の住民基本台帳を基に、全国1892の市区町村を集計した結果、外国人の比率が10%を超える自治体が27市区町村に達したことが分かりました。1年前の調査から7市区町村増加し、外国人の受け入れが加速している現状を浮き彫りにしています。一方、全国の在留外国人数は過去最大の376万人に達し、前年比で35万人増という歴史的な伸びを記録。少子高齢化による深刻な労働力不足の中、外国人が日本経済の重要な担い手となっています。

観光地とスキー場で高い集中度

外国人比率が最も高いのは北海道占冠村で36.6%です。住民1590人中582人が外国人という状況です。占冠村は富良野・美瑛観光圏に含まれ、スキーシーズンに訪日外国人が大量に流入する地域。冬季に外国人観光客が特に増加する傾向を示しており、観光産業の担い手として定着している姿が見えます。

同じく北海道の赤井川村(35.3%)もスキー場を中心とした観光地です。キロロスノーワールドを擁する赤井川村は、国内有数のパウダースノーで知られ、冬季に多くの外国人スキーヤーが訪れます。北海道のスキー場周辺は外国人の定住が顕著で、宿泊業や飲食サービス業、リゾート運営など、観光関連産業を中心に外国人労働者が集積しています。

北海道からは占冠村、赤井川村、倶知安町(21.2%)、留寿都村(19.8%)、二セコ町(19.0%)、白馬村(18.3%)と、上位10位の中に6自治体が名を連ねています。これらの地域では、ホテルや飲食店、リフト運営などで外国人が欠かせない存在です。

「北海道のスキー場で働く人、本当に外国人ばかりですよね。これなしに観光業は成り立たないんじゃないかな」

工業地帯で進む外国人の定着

一方、大都市圏ではどうでしょうか。大阪市生野区が23.3%で上位に入っています。生野区は、かつてゴムやガラス工業が盛んな工業地帯で、製造業事業所が大阪市内で2番目に多い地域です。古くから在日韓国・朝鮮人が多く居住していた地域ですが、近年はベトナム人や中国人といった新来外国人も増加。60以上の国や地域から外国人が流入しており、多国籍化が加速しています。

比率的には全国平均3.0%を大きく上回る生野区でも、製造業の人手不足を補う労働力として、外国人が重要な役割を担っています。小規模な金属加工や機械製造などの職人的な作業で、特に中国やベトナムからの労働者が必要とされているのが実情です。

「うちの工場、日本人の若い人がいないから、もう外国人がいなかったら操業できません」

全国35万人増、人口減少社会での貴重な労働力

政府の集計によれば、全国の在留外国人は昨年末時点で376万人に達し、2年前から実に35万人増えています。技能実習生を含む外国人労働者や永住者らで構成され、全国平均では住民の3.0%を占めます。

外国人労働者が就業する主な産業は、農業、建設業、製造業、宿泊業、飲食サービス業が中心です。特に人手不足が深刻な地方では、農業や水産加工、観光関連産業での外国人の受け入れが急増。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2070年には外国人比率が全国で10.8%に達する可能性があるとされており、日本の人口の約10人に1人が外国人になる時代が来る可能性があります。

「少子化で日本人だけでは労働力が足りない。もう外国人受け入れは避けられない」

制度の見直しで人権保護を強化

一方で、外国人労働者の劣悪な労働環境が指摘される中、政府は2027年に技能実習制度を廃止し、「育成就労制度」に切り替える方針を決めています。従来の制度では転籍が制限され、雇用主に逆らえない環境が問題視されていました。新制度では転籍条件を緩和し、日本語教育を200時間以上義務化するなど、外国人の権利保護を強化する予定です。

しかし、制度の見直しだけでは十分ではないとの指摘も多くあります。法整備が進む中でも、最低賃金以下の給与や職場環境の改善が急務です。外国人労働者も日本で働く以上、同じ基準で保護される必要があります。しかし現状では、言語の壁や制度の複雑さから、その実現は道半ばです。

「外国人労働者を保護するルール、もっと厳しくしないと、ブラック企業が搾取を続けますよ」

地方経済を支える外国人の存在感

外国人が高い比率で定着している地域では、地域経済全体が外国人労働力に支えられている側面が強まっています。北海道の観光地やニセコ周辺では、冬季観光が外国人なしには成立しない状況です。同時に、外国人が日本に定住することで、賃貸住宅の需要が生まれ、地域コミュニティも多様化しています。

ただし、急速な外国人集中には課題も伴います。言語や文化の違いによる摩擦、地価上昇に伴う負担増、生活インフラの不足など、地域社会全体が対応を迫られています。多文化共生を実現するには、制度の整備だけでなく、日本人社会の意識改革が不可欠となってきているのです。

国民の側でも、外国人労働者受け入れについて、単なる「労働力補填」という見方から脱却し、共生社会の構築という視点への転換が求められます。今後、日本は外国人が選んでくれる国になるための環境整備が急務となるでしょう。

外国人比率10%超の市区町村リスト

(2025年1月1日時点の住民基本台帳人口から算出) 政令指定都市の行政区を含む1892市区町村を集計

順位市区町村名都道府県比率(%)
1占冠村北海道36.6
2赤井川村北海道35.3
3生野区大阪市23.3
4大泉町群馬県21.3
5倶知安町北海道21.2
6留寿都村北海道19.8
7二セコ町北海道19.0
8白馬村長野県18.3
9浪速区大阪市16.6
10西成区大阪市14.4
11新宿区東京都13.6
12蕨市埼玉県12.5
13恩納村沖縄県12.4
14豊島区東京都12.3
15野沢温泉村長野県12.1
16中区横浜市12.0
17木曽岬町三重県11.8
18小谷村長野県11.3
19常総市茨城県11.3
20箱根町神奈川県11.3
21中区名古屋市10.9
22中央区神戸市10.7
23美濃加茂市岐阜県10.7
24飛島村愛知県10.6
25荒川区東京都10.6
26草津町群馬県10.5
27中央区大阪市10.4
全国平均3.0

注記

  • 集計対象:政令指定都市の行政区を含む1892市区町村
  • データ基準日:2025年1月1日時点
  • 前年比:7市区町村増加

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