
中国「海上民兵」100隻超、南沙で大規模集結 — フィリピン監視機に火炎弾
2025年12月6日、Philippine Coast Guard(PCG)は、南シナ海にあるSpratly Islands(南沙諸島)、特にSubi Reef(スービ礁)周辺で、Whitsun Reef(ウィットスン礁、中国名・牛軛礁)付近を含め、中国側の船舶100隻超が確認されたと発表した。
このうちスービ礁近辺には、退役軍人や漁民らで構成されるとみられる “海上民兵” 搭乗の船舶約29隻が停泊。さらに別地点では民兵船を含む計72隻余りが確認されたという。
問題はそれだけではない。沿岸警備隊および漁業資源局の航空機が実施した監視・警戒活動に対し、中国側船舶がフレア(信号用火炎弾)を発射したことをフィリピン側が明らかにした。これによって、ただの「数の増加」以上の、直接的な威嚇行為があったと見なされている。
この報告は、南沙諸島を巡る最近の緊張の高まりを象徴する事件の一つだ。
なぜこの規模・このタイミングか — 中国の海上戦略と「グレーゾーン戦術」
そもそも、中国が南シナ海で大規模な船団を動かすのは珍しいことではない。だが、今回のような100隻超の“海上民兵含む”集結、しかも監視機への火炎弾という直接的威嚇は、これまでの「接近・追尾・水砲」などのいわゆる “グレーゾーン作戦” を一段と踏み込んだものと見られる。
過去数年、中国は「海警局」「海軍」「民兵」を駆使し、南沙・スービ礁やScarborough Shoal(黄岩礁/パンアタック礁)などで、偵察妨害、水砲、接近、レーザー照射など様々な手段でフィリピン側の航行や警戒を妨害してきた。
とりわけ「民兵船団」の利用は、中国にとって正規軍を使わず“既成事実の積み上げ”や“威圧による支配”を続ける都合の良い方法だ。今回のような大規模配備は、中国が“海上での優位”を改めて示すための戦略的意思表示とみられる。
また、最近の報道では、中国が東アジア全域にわたって海軍・海警・補助船を含めた過去最大規模の展開を行っていることも明らかになっている。南シナ海だけでなく、黄海・東シナ海・西太平洋まで広がるこの展開は、地域の緊張を一気に高めかねない状況だ。
フィリピンと同盟国の反応 — 米国、日本、地域安定への波及
この事件を受け、フィリピン政府・沿岸警備当局は強く抗議している。PCGは「火炎弾発射は重大かつ危険な挑発行為」とし、中国側の行為を国際法・海洋法に抵触する可能性があると非難した。
さらに、こうした中国の強硬な海上戦術は、地域の同盟国やパートナーにも懸念を呼び起こしている。特に、United States Navy をはじめとする米国の同盟国は、フィリピンとの相互防衛条約を再確認し、中国の「強制的」振る舞いが地域安定を損なうとの警告を強めている。
また、日本や台湾も、中国の今回のような大規模な海上展開を注視し、共同で海洋安全保障の枠組みを強化する必要性を訴えている。
なぜ日本も無関係ではいられないか — 地政学的な波及と海上交通の安全
この南沙沖での軍事的緊張は、単にフィリピンと中国だけの問題では済まない。南シナ海は世界的に重要な海上交通路であり、年間数兆ドル規模の貨物が往来する。中国が力による現状変更を意図し続ければ、海上の安全保障が揺らぎ、国際貿易にも重大な影響が及ぶ。
また日本から見ても、この地域での中国の拡張主義は無視できない問題だ。最近の日台・日米・日比の安全保障協力の拡大や共同訓練は、こうした中国の動きに対する牽制であり、日本も海洋の安定確保という観点からさらなる関与を迫られている。
さらに、こうした中国の「灰色地帯での力の行使」は、将来的にさらに過激な軍事行動や偶発的衝突のリスクを孕んでおり、日本の安全保障環境にも長期的な影を落とす可能性がある。
今後の焦点 — 国際法と地域協調の行方
今回のような事態を受け、注目すべきは次の点だ。
- フィリピンや同盟国による外交・法的な対応強化。国際海洋法や過去の裁定(例:2016年の常設仲裁裁判所の判断)を前提に、中国の行動を国際社会で問題化できるか。
- 実際の衝突や事故の回避。火炎弾、水砲、船団の巧妙な運用――こうした「グレーゾーン」での挑発がどこまでエスカレートするか。場合によっては軍事衝突や事故につながる可能性がある。
- 地域連携の深化。フィリピンだけでなく、日本、米国、オーストラリアなどが海洋法・自由航行・地域の安定維持を共通目標に据えることの重要性。
- 海洋警備能力の強化。沿岸警備能力、監視能力、情報共有体制の整備が急務となる。
今回の南沙での中国船団の大規模出現と火炎弾発射という挑発行為は、単なる偶発的事件ではない。中国は明確に、自らの意志と実力で「現状」を固めようとしている。
このまま放置すれば、南シナ海は「制海権を巡る冷たい戦場」になりかねない。国際社会、特に当事国および関係国は、曖昧さを容認せず、力による支配を許さない姿勢を示す必要がある。





















