パリ市、反捕鯨活動家ポール・ワトソン氏に名誉市民称号授与

2025年2月3日、フランス・パリのアンヌ・イダルゴ市長は、反捕鯨団体「シー・シェパード」創設者のポール・ワトソン氏(74)に名誉市民の称号を授与しました。この決定は、昨年11月に市議会で全会一致で承認されており、フランス国内の反捕鯨世論を背景に、ワトソン氏への連帯と国際社会への強いメッセージを発信する意図があると説明されています。

授与式でワトソン氏は「誇らしく、光栄に思う」と述べました。彼は昨年7月、デンマーク領グリーンランドで拘束されましたが、同年12月に釈放され、現在は家族と共にフランスに居住しています。日本政府は彼の引き渡しを求めましたが、デンマーク当局により拒否されました。

ポール・ワトソン氏は、カナダ出身の環境活動家であり、1977年に「シー・シェパード」を設立して以来、商業捕鯨や違法漁業に対する過激な抗議活動で知られています。彼の活動は多くの支持を集める一方、その手法の過激さから各国政府や漁業関係者との間で多くの摩擦を生んできました。

以下に、ワトソン氏が関与した主な事件を10件以上挙げます。

  • 1979年6月:海賊捕鯨船「シエラ号」への体当たり攻撃 ワトソン氏は、シー・シェパード号でポルトガルの海賊捕鯨船「シエラ号」に体当たりし、航行不能に陥らせました。
  • 1986年:アイスランド捕鯨基地への攻撃 アイスランドの捕鯨基地に侵入し、捕鯨船2隻を破壊するなどの破壊活動を行いました。
  • 1992年:ノルウェー捕鯨船「Nybrænna」への攻撃 ノルウェーの捕鯨船「Nybrænna」を沈没させるための攻撃を行いました。
  • 1994年:ノルウェー捕鯨船「Senet」への攻撃 ノルウェーの捕鯨船「Senet」を攻撃し、損傷を与えました。
  • 1997年:ノルウェー捕鯨船「Morild」への攻撃 ノルウェーの捕鯨船「Morild」を攻撃し、損傷を与えました。
  • 2002年:コスタリカのサメ漁船「Varadero」への妨害 コスタリカのサメ漁船「Varadero」の航行を妨害し、後にこの件で逮捕状が発行されました。
  • 2008年:日本の調査捕鯨船「第2昭南丸」への妨害 南極海で日本の調査捕鯨船「第2昭南丸」に対して妨害活動を行い、船員との間で衝突が発生しました。
  • 2010年:日本の調査捕鯨船「第2昭南丸」との衝突 シー・シェパードの高速艇「アディ・ギル号」が日本の調査捕鯨船「第2昭南丸」と衝突し、沈没しました。
  • 2012年:ドイツでの逮捕 コスタリカのサメ漁船に対する妨害の容疑で、ドイツ・フランクフルトで逮捕されましたが、保釈中に逃亡しました。
  • 2013年:日本の調査捕鯨船への妨害 南極海で日本の調査捕鯨船に対して妨害活動を行い、国際的な注目を集めました。
  • 2024年7月:グリーンランドでの逮捕 日本の引き渡し要請に基づき、デンマーク領グリーンランドで逮捕されましたが、同年12月に釈放されました。

これらの活動を通じて、ワトソン氏は海洋生態系の保護と商業捕鯨の廃止を訴えてきました。彼の過激な手法は賛否両論を呼び起こし、支持者からは海洋保護の英雄と称賛される一方、批判者からは法を無視した過激派と非難されています。

ワトソン氏の評価とパリ市の決定の背景

ポール・ワトソン氏の活動は、海洋保護の観点から高く評価される一方で、その手法の過激さに対する批判も少なくありません。シー・シェパードは、環境保護団体でありながら、捕鯨船への直接的な攻撃や物理的妨害を行うことで「環境テロリスト」とも呼ばれることがあります。日本政府は彼の行動を厳しく非難し、国際手配するなどの措置を講じてきました。

フランスでは、特に環境問題に対する関心が高く、捕鯨反対の世論が根強いことが今回の名誉市民授与の背景にあると考えられます。パリ市のイダルゴ市長は、「海洋保護活動への連帯と国際社会へのメッセージ」としてこの決定を下したと説明しており、ワトソン氏の活動を支持する立場を明確に示しました。

ワトソン氏は授与式で「誇りに思う」と発言し、フランスを自身の新たな拠点とする可能性も示唆しています。一方で、日本政府はこの動きを批判する可能性があり、外交的な摩擦を引き起こす要因となるかもしれません。

関連記事

おすすめ記事

  1. 減税は日本経済の処方箋になるか? ――インフレ恐怖と古い経済学から脱却を 私たちの…
  2. 消費税は、日本の主要な税収源の一つとして位置づけられています。 しかし、その運用方法には多く…
  3. 再エネ賦課金、過去最高の月1600円超 2032年まで増加見通し
    再エネ賦課金、過去最高へ 月1600円超の上乗せ負担に「国民の限界超えた」と専門家が警鐘 太…
  4. 日本を訪れる外国人観光客の数は年々増加しており、特に中国人観光客の訪日人数は目覚ましく、昨年は70…
  5. 2025年7月、いよいよ参議院選挙が実施される。この選挙は、日本の立法府における重要な役割を果たす…

新着記事

  1. 副首都構想のいま—維新は何を実現したいのか 日本維新の会が掲げる「副首都構想」は、東京一極集…
  2. 台湾・国史館の機密解除 「便衣」潜入と“相互不侵”を示す電報群 台湾の国史館(國史館)と台湾…
  3. [ays_poll id=8] …
  4. 参院選で示された「減税」への圧倒的な民意 7月20日に投開票が行われた参院選では、ガソリンの…
  5. 日本のODAは10年で36兆円超に増加
    日本のODA支出は10年で36兆円規模へ 日本政府が海外に対して行ってきた政府開発援助(OD…
  6. 中国大使館が呼びかける「中国人襲撃への警戒」 在日中国大使館が8月18日に発表した注意喚起が…
  7. 重要な土地を外国資本に奪われるリスク 政府の動きの遅さが招く“静かなる有事” 政府が初…
  8. 米ペンシルベニア州USスチール工場で爆発 死者2人・負傷10人 日本製鉄傘下で発生 米国東部…
  9. 日本移住で大学まで学費無料?中国で密かに広がる“教育支援”悪用の動き 厚生労働省の統計によれ…
  10. 日米関係に新たな火種か 米国が日本製品に15%の追加関税を発動 「合意」との齟齬に懸念広がる …
ページ上部へ戻る