
米政権が鉄鋼・アルミ関税を50%に倍増 国内産業守る姿勢を鮮明に
アメリカのトランプ大統領は、鉄鋼とアルミニウムの輸入品に対する関税をこれまでの25%から50%へ引き上げる文書に署名し、即日発効すると発表した。関係者によれば、6月4日未明(米東部時間)に発動される見通しで、関税率は実質的に倍増となる。トランプ政権は「国内の鉄鋼・アルミ産業を守るために必要な措置だ」と強調しており、安価な外国製品の流入を食い止めることが主な狙いとされる。
「フェンスを越えさせない」大統領の意図
トランプ氏は、関税を25%から50%に引き上げる理由について、「50%であれば(海外製品は)フェンスを越えられない」と語り、海外メーカーによる米市場への参入を阻止する意志をあらわにした。今回の対応は、通商拡大法232条を根拠に安全保障の観点から発動されたもので、2018年の初回導入に続くさらなる強化措置となる。
ホワイトハウスのレビット報道官は、「国家の安全と雇用の確保を両立させるには、高率の関税が必要だ」と説明し、産業空洞化の防止や米国内の投資活性化に期待を寄せた。
支持と警戒が交錯 市場は即反応
関税引き上げの報を受け、米国内の鉄鋼・アルミメーカーの株価は一時上昇した。国内供給に追い風となる一方、自動車や建設など鉄鋼・アルミを部材として利用する業界からは懸念の声も上がっている。価格の上昇が波及すれば、製造コストの増加や消費者への転嫁といった影響は避けられない。
経済アナリストの間では「短期的には一部産業の保護になるかもしれないが、中長期的には報復関税やサプライチェーンの混乱を招く恐れがある」とする見方が大勢だ。
各国の反発と報復の可能性
関税の対象となる諸外国、とくにカナダや韓国、欧州連合(EU)などは強く反発しており、外交的な摩擦が一気に高まっている。カナダ首相は「関税は友好国に対する挑発だ」と述べ、対抗措置を含むあらゆる選択肢を検討中とされる。
また、EU側は「貿易ルールに反する一方的措置であり、WTO違反の可能性もある」と警告。アジア圏でも韓国が「影響を最小化すべく、迅速な交渉を行う」との声明を出している。
経済界からは懸念の声
経済界では、一部の産業が恩恵を受ける一方で、全体としてはコスト高による悪影響が懸念されている。米国内では鉄鋼とアルミニウムの価格が急上昇し始めており、建設、家電、さらには食品包装などの分野でも価格転嫁が避けられないとの見方が強い。
ある自動車業界関係者は、「鉄板やアルミ部材の仕入れコストが跳ね上がれば、販売価格にも響く。国内産業保護の名の下に、消費者負担が増す結果となる」と吐露している。
今後の展開と政治的思惑
トランプ大統領は、今回の関税措置を交渉カードとしても活用する構えで、「これが最終手段ではない」とも語っている。7月上旬までに他の品目への拡大も検討中とされ、対象国に対して“最良のオファー”を求める猶予期間を設ける姿勢だ。
この対応は、国内の選挙に向けて製造業や労働者層からの支持を狙う政治的意図も指摘されている。一方、報復関税が実際に実施された場合、農産物など米国の輸出品が標的となる可能性もあり、国内経済への逆風は必至との声も根強い。
SNS上の反応
「アメリカ第一って言いながら、消費者の財布はどうでもいいのか」
「鉄鋼は守られるけど、自動車や建設がダメになるのでは?」
「また関税戦争。結局、損するのは普通の労働者だよ」
「選挙対策で関税?ご都合主義がすぎる」
「WTO違反じゃないのか。いずれ訴訟になると思う」
トランプ政権が打ち出した鉄鋼・アルミ関税の倍増は、アメリカ経済の再建と安全保障の名目で行われたが、同時に世界との貿易摩擦を深める火種にもなりかねない。関係国との交渉は困難を極めると見られ、今後の展開次第ではグローバル経済に深刻な影響を及ぼす可能性もある。