
米国の関税政策に対抗、日中協力の新たな局面へ — 河野洋平氏率いる訪中団と李強首相が会談
2025年6月3日、北京の人民大会堂にて、中国の李強首相と河野洋平元衆議院議長が率いる日本国際貿易促進協会(国貿促)の代表団が会談を行った。この会談で李首相は、トランプ米政権による関税措置を「世界各国への挑戦」と位置づけ、日中両国が連携して対抗すべきだと強調した。
李首相は、5月に米中両政府が追加関税の大幅引き下げに合意したことについて、「中国側の主張に沿ったものだ」と評価しつつも、「中国側が合意をするために原則を譲ることはない」との姿勢を明確にした。この発言は、中国が今後も自国の経済的主権を堅持しつつ、国際的な経済交渉に臨む姿勢を示している。
一方、河野氏は、中国によるレアアース(希土類)などの輸出規制が日本企業に与える影響について懸念を表明し、配慮を求めた。これに対し、李首相は日本側の要望を「高く重視している」と応じた。また、河野氏が日本側のパンダ貸与希望を伝えたところ、李首相は「高く重視している」との意向を示し、文化交流の深化にも前向きな姿勢を見せた。
さらに、河野氏が韓国で新大統領が就任すれば、日本で開催予定の日中韓3カ国による首脳会議の調整が進むとの見解を示すと、李首相は「日本、韓国と意思疎通を図っている」と述べ、三国間の協力強化に意欲を示した。
今回の訪中団には、日本企業の幹部や沖縄県の大城肇副知事ら約100人が参加しており、日中間の経済・文化交流の促進を目的としている。国貿促は、中国との友好促進や経済関係の強化を目的に活動する日中友好7団体の一つであり、河野氏が会長を務めている。同協会は、2023年の訪中では李首相と、2024年は何立峰副首相とそれぞれ会談を行っており、継続的な対話を重ねている。
このような日中間の協力強化の動きは、米国の保護主義的な経済政策に対抗するための戦略的連携として注目される。特に、トランプ政権による関税措置が世界経済に与える影響が懸念される中、日中両国が協力して自由貿易体制を維持・強化することは、地域の安定と繁栄にとって重要な意味を持つ。
今後、日中両国が具体的な協力策をどのように展開していくのか、また、日中韓三国間の連携がどのように進展するのかが注目される。特に、経済分野における協力だけでなく、文化交流や人的交流の深化が、地域全体の信頼醸成と安定に寄与することが期待される。
日中関係の今後の展開は、アジア太平洋地域のみならず、世界経済全体にとっても重要な意味を持つ。両国が互いの立場を尊重し、建設的な対話と協力を進めることが、持続可能な発展と平和の実現につながるであろう。