
外国人による農地取得に懸念 規制不十分で広がる“見えない脅威”
日本の農地が今、静かに“買われて”いる。相手は中国や韓国といった近隣諸国にとどまらず、スイスや米国などの欧米諸国の個人・法人にも広がっている。問題はその取得実態を日本政府が長年にわたり把握してこなかったこと、そして現在も外資に対する明確な規制がない点にある。日本の食と安全保障を支える農地が、いまや“無防備な資産”として世界に開かれている状況に、専門家や地方議会から不安の声が上がっている。
農地が“静かに買われる”背景と数字
農林水産省の最新のまとめによると、2023年に日本国内の農地を取得した外国人は219人、取得面積はおよそ60ヘクタールに及ぶ。法人では20社が約30ヘクタールを所有したとされる。ただし、これらの情報に関して政府は「個人情報保護」の観点から国籍や詳細を開示しておらず、実態の輪郭ははっきりしていない。
農地取得は原則として「耕作を目的とした者」に限られ、市町村の農業委員会の許可が必要となっている。しかし農林水産省の担当者は、「計画通りの耕作が行われているかまでは確認していない」とし、実際には利用実態の精査は行われていない。転用があれば違法行為になるものの、その摘発や調査も曖昧な状態が続いている。
首都圏でも相次ぐ取得 中国・韓国以外の国籍も
関東地方でも外国人による農地取得は進んでいる。千葉県では2023年、韓国、パキスタン、モンゴル、台湾、タイ、スリランカ、そして米国出身者による取得が確認されており、総面積は約5.5ヘクタールに達した。
一方、埼玉県では中国や韓国、フィリピン、台湾といった国籍の個人が約7000平方メートル、さらに中国や韓国の法人も約7200平方メートルを取得していた。神奈川県でも、中国や韓国、パキスタンの個人による取得が記録されている。
東京都に限っては、農業用地自体が少ないためか「外国人による農地取得の事例はない」と明言している。
日本人は海外で農地が買えない?“不平等”への指摘も
日本の法律は「相互主義」を基本とし、相手国が日本人に対してどう扱うかによって、日本側の対応も決められる。しかし、中国などの共産主義国家では日本人が土地そのものを所有することはできない。実際、中国国内で農地や不動産を買うことは、法律上ほぼ不可能である。
これに対し、日本では外国人が許可さえ得れば農地を取得できるため、制度上の“穴”が指摘されている。千葉県の折本龍則県議は「経済安全保障上の重大な問題だ」として、開会中の県議会で取り上げる考えを示している。
「今後、在留外国人が増える中で、日本の農地や水源といった基幹資源が規制もなく取得されるのは深刻な問題。国も自治体も、まずは正確な実態把握から始めるべきだ」
政府は対策強化へ しかし“後手”との批判も
こうした状況を受けて政府は2023年9月から、農地取得時に国籍や在留資格の報告を義務化。さらに農地台帳に国籍情報を明記する制度も導入された。ようやく取得実態の把握に乗り出した格好だが、「これまでの放置が長すぎた」との批判は根強い。
2025年4月からはさらに制度が改正され、外国人による農地取得の規制が強化される。特に、外国人が実質支配する法人が農地を取得する際には、厳格な審査が行われるようになる。これにより、名義だけ日本法人にする“抜け道”も封じられる可能性がある。
ただし、これが農業人材の受け入れ制度や外国資本の活用にブレーキをかけるリスクも指摘されている。特に農業の担い手が不足する地方では、外国人実習生などに頼る部分も大きく、制度の“副作用”にも注意が必要だ。
ネットでも懸念の声相次ぐ
X(旧Twitter)などのSNSでもこの問題に対して、多くの懸念や疑問の声が上がっている。
「え、日本の農地がもう中国資本に買われてるの?本気で国守る気あるの?」
「日本人が中国で土地買えないのに、なぜ中国人は日本で農地買えるのか」
「外資による農地取得って、これも経済侵略の一環でしょ」
「農業のこと知らずに投機目的で買われたら、耕作放棄地が増えるだけ」
「農業委員会のチェック体制、もっと強化しないと手遅れになる」
農地は国の“命綱” 制度の見直しと監視強化が急務
食料自給率がカギを握る時代において、農地は単なる不動産ではなく、国家の命綱ともいえるインフラだ。いま、世界各国が水や土地を「戦略資源」として管理・規制を強化する中、日本の姿勢はあまりに緩い。地方議会や有識者からも「事後チェックではなく、事前規制と恒常的な監視体制が必要」との声が相次いでいる。
農業の未来、そして食の安全を守るためにも、政府・自治体の責任は重い。