
中国のブイ撤去も日本政府の無策が残した禍根
沖縄県・与那国島の南方海域に設置されていた中国のブイが撤去された。日本の排他的経済水域(EEZ)内で確認されていた中国のブイは、これで全てなくなったとされる。しかし、この撤去をもって一件落着と見るのはあまりに早計である。そもそも中国が日本のEEZ内に、わが国の許可なく海洋ブイを設置していたという事実自体、国家主権を侵害する極めて深刻な問題である。
それにもかかわらず、日本政府の対応は終始及び腰だった。外交ルートで「懸念を伝えた」とするだけで、設置当初から強く抗議することもなく、撤去を求める直接的な行動も明示されなかった。結局、設置から約10か月もの間、中国のブイは海上にとどまり、日本のEEZ内に異物が存在する状態が放置されていたことになる。
中国の狙いは“既成事実化”
今回のブイ設置は偶発的なミスなどではない。位置は与那国島南方、つまり台湾有事の際に戦略上極めて重要なエリアにあたる。中国はすでに過去にも尖閣諸島沖に同様のブイを設置しており、これらの海洋機器を使って、観測名目で海洋の軍事的利用を進めていると指摘されている。
また、中国国内の研究機関はこうしたブイから得られるデータを活用して、潜水艦の探知や艦船の航路分析などを行っているとされる。いわば民間技術を装った軍事インフラの構築であり、その活動を「常態化」させることで、日本政府の反応を見ながら行動のハードルを下げる、いわゆる“グレーゾーン戦術”の一環だと捉えるべきである。
政府の「見て見ぬふり」が招いた主権軽視
最も問題なのは、日本政府がこうした挑発行為に対して、法的・実務的措置をとらなかったことだ。国際法の観点から見ても、他国のEEZ内での設置には当該国の同意が必要とされている。ブイが調査・研究目的であったとしても、日本政府は明確に拒否の意思表示を行い、必要であれば実力をもって撤去すべきだった。
しかも、政府はブイの存在を国民に対して明示的に説明せず、設置経緯や位置、機能に関する情報を一切公開していない。国民が「自国のEEZが侵されている」という現実を知らないまま、時間だけが過ぎていったのである。民主主義国家として、情報公開と説明責任を果たさなかった点は看過できない。
今後求められる毅然たる姿勢
中国による今回のブイ撤去は、あくまで「任務が終了したため」との一方的な説明であり、日本の要求に応じたとは言い難い。今回の件から見えてくるのは、日本政府の消極的な外交姿勢が、かえって相手国に“付け入る隙”を与えかねないという危機感である。
今後同様の事案を防ぐためには、以下のような対応が急務だ。
- EEZ内の異常に対する即時の調査と公開
- 主権侵害に対しては抗議だけでなく、撤去も含めた具体的措置を準備
- 同盟国との連携を強化し、国際的な包囲網を築く
- 海上保安庁や海自による警戒・監視体制の強化
日本の領海とEEZは単なる地理的な境界ではなく、主権と安全保障の基盤である。国として毅然とした態度を示さなければ、やがて本当の危機が現実になるだろう。中国の一連の行為を一過性の問題と捉えていては、安全保障の地盤沈下は避けられない。
ネットの反応
「撤去してくれたからOKって雰囲気出してる政府、マジでどうかしてる」
「自国のEEZで好き放題されても『懸念を表明』だけ?それって主権放棄でしょ」
「中国の戦略は周到。日本はいつまで“話し合い”幻想にすがるのか」
「ブイ設置を許すようじゃ、次は何をされても文句言えないぞ」
「撤去されたからって安心するな。また別の海域に来るぞ、絶対に」
参考サイト
中国、日本EEZ内のブイを撤去
小坂英二氏「中国に敗北」と政権批判 情報ブイ放置に国民の危機感高まる
尖閣海域に係留ブイ設置を要請 石垣市議団が上京、漁業者の安全確保訴え 政府は慎重姿勢
沖縄・波照間島沖の中国語表記ブイ撤去に関して国に質問送付
中国、尖閣諸島周辺のEEZ内に設置したブイを撤去 未撤去のブイも依然存在
高市早苗氏、中国のEEZ内ブイ設置に強く抗議—撤去を求める
沖縄・波照間島近海に設置された中国の海上ブイ、撤去されず
中国 日本のEEZ内にブイ設置 日本側求める即時撤去に応じず
沖縄・波照間島沖の日本EEZ内に中国語ブイ 台湾有事視野の軍事目的か