
ドイツ、難民政策を大転換 不法移民の入国原則拒否へ
2025年5月6日、ドイツのメルツ新政権は、メルケル元首相が2015年の欧州難民危機時に導入した「難民の入国を拒まない」政策を正式に撤回し、不法移民の入国を原則として拒否する方針を打ち出した。これは、ドイツ国内の治安問題や極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の台頭を受けた政治的な圧力を背景としている。
政策変更の背景:治安悪化と政治的圧力
メルツ政権は、難民政策の厳格化を最優先事項として掲げた。近年、ドイツでは難民による犯罪が報じられ、治安への懸念が広がっている。2025年には以下の重大事件が発生し、政策見直しの引き金となった。
- バイエルン州アシャッフェンブルク:アフガニスタン出身の難民が複数人を刺傷。
- ベルリン:シリア人難民によるホロコースト記念碑での刺傷事件。
- ミュンヘン:アフガニスタン出身の移民が車でデモ隊に突入。
これらの事件は、国内外で衝撃を与え、ドイツ国民の不安が高まった。特にAfDは移民排斥を掲げて支持を拡大し、政権への圧力を強めた。
EU各国も難民政策を厳格化
ドイツだけでなく、EU各国も難民政策を厳格化している。
- フランス:国境管理を強化し、EUの「帰還ハブ」計画に積極参加。
- イタリア:アルバニアとの協定で移民を国外で審査。
- ギリシャ:不法移民の押し戻しや収容期間の延長。
- オーストリア:家族再会制度の一時停止。
- ベルギー:他国で難民申請済みの移民の再申請を拒否。
EU全体での政策調整と今後の課題
EU全体では「共通欧州帰還システム」の導入が検討され、難民の迅速な帰還を目指している。また、非EU国籍者の出入国を管理する「出入国システム(EES)」も導入予定で、移民管理の厳格化が進む見込みだ。
しかし、各国の政策が人権問題を招く可能性もあり、EUは移民保護と治安維持のバランスを模索している。
移民政策の転換と社会への影響
メルツ政権の難民政策は、ドイツ国内外で議論を呼んでいる。特に治安問題への対応を評価する声がある一方、人道的配慮が欠けているとの批判もある。また、ドイツの政策がEU全体に影響を及ぼし、今後の移民・難民政策の方向性を大きく左右する可能性がある。
さらに、労働力不足や経済成長への影響も懸念されており、各国は移民の管理と社会統合のバランスを取ることが求められている。