
【密漁“攻略”がSNSで拡散】中国人観光客による潮干狩り密漁、なぜ繰り返されるのか?
春の訪れとともに、各地の海岸では潮干狩りを楽しむ人々の姿が増えている。子どもから大人までが夢中になる季節の風物詩だが、ここ数年、その陰で繰り返し問題視されているのが「中国人による密漁」だ。
伊勢エビやウニ、ナマコにホンビノス貝まで。漁業者の許可なく、あるいは指定された採取量を無視して、外国人観光客や在日外国人が大量に採る。なかには、採った海産物を売買するケースも確認されている。
「潮干狩り密漁」はレジャー感覚?現場では何が起きているのか
現場ではどんな密漁が行われているのか。たとえば千葉県市川市の江戸川放水路。ここでは漁業権が設定されていないため、一般人でも採取は可能だが、問題はその後。中国籍の男女がカキの殻だけを現場に大量に捨て、中身だけを持ち帰る不法投棄が相次いだ。市は「カキ殻投棄禁止条例」まで制定し、対応に追われた。
東京湾では、夜の海にライトを照らしてワタリガニを探す中国人グループの姿が度々目撃されている。トングでカニをつかまえて「これ、面白い遊びだよ」と語るその表情は悪びれた様子もない。
茨城・大洗では、潮干狩り禁止区域で大量のハマグリを買い物カゴに詰めていた中国人観光客が摘発された。警察の注意にも「自分は違反じゃない」と反論するなど、ルールの存在自体が理解されていないケースもある。
SNSで密漁“攻略法”が拡散 「知らなかった」では済まされない
問題の背景には、中国SNSでの情報共有がある。中国版インスタグラム「小紅書(RED)」をはじめ、各種動画投稿サイトや掲示板では、「日本で潮干狩りを楽しむ方法」が“攻略”として紹介されている。
投稿には「この日が大潮でおすすめ」「塩をまくとマテ貝が飛び出すよ」「カキが大量に取れた、一緒に行く人募集」といった内容が並び、中には地図付きでスポット紹介をしているものまである。
こうした“攻略”は、もともと旅行や美容、医薬品などの生活情報を共有する文化の中から生まれたが、日本の潮干狩りにも転用され、密漁の温床になってしまっているのだ。
「売ってます」も日常に? 個人間取引、密漁のビジネス化
遊び半分でやっているように見えて、実は密かに「販売」されているケースもある。SNSやチャットアプリの在日中国人コミュニティで、「今日たくさん採れたけど、欲しい人はいる?」という投稿があり、スマホ決済でそのままやりとりが完了するという。
さらに、沖縄では天然記念物のオカヤドカリを約680匹も捕獲していた中国人夫婦が2023年に逮捕された。これは明らかに中国への輸出を狙った商業密漁であり、「野味(野生動物食)」を好む中国の一部富裕層の需要が背景にあるとみられている。
密漁は中国人だけではない 日本国内の“黒いビジネス”も
一方で、密漁のすべてが外国人によるものではない。暴力団などが関与する「本職」の密漁も存在する。アワビやナマコ、ウニなどの高級食材は、国内外で高値で取引されており、暴力団の資金源として定着している。
ジャーナリスト鈴木智彦氏によれば、密漁による経済規模は100億円以上とも言われている。密漁された品は国内の飲食店に流れるほか、中国市場への輸出ルートも存在するとされる。
対策は進んだのか?9年経っても看板だけ
実はこの問題、報道されるようになってからすでに9年が経過している。最初に話題になったのは、2016年のテレビ番組「中国人の“爆潮干狩り”」。以来、毎年のようにニュースになるものの、対策といえば中国語の看板設置くらい。根本的な解決にはほど遠い。
中国国内では、監視カメラとAIを使った厳格な監視社会のもと、密漁行為は減少傾向にある都市もある。日本でも、テクノロジーの力を借りるなど、現代的なアプローチが必要になっている。
潮干狩り文化を守るために、今できること
水産庁の発表によると、密漁検挙の多くは漁業者ではない一般人によるもの。そしてその多くが、道具も許可もなく手づかみで行う「徒手採捕」だ。
ルールを知らない、あるいは軽視するレジャー感覚の密漁者にどう向き合うか。地域の漁業者や行政、観光業者が一丸となり、外国語でのルール案内や適切な監視体制を整備する必要がある。
何よりもまず、「密漁は犯罪である」という認識を、訪日観光客も含めたすべての人に根付かせることが急務だ。