
ホワイトハウスが新型コロナの起源を再び追及 武漢研究所流出説を前面に
アメリカ政府が、新型コロナウイルスの発生源を中国の研究所とする見解をあらためて強調した。ホワイトハウスは4月18日、「研究所からの流出こそが真の起源だ」とする特設ウェブサイトを公開。科学界や国際社会の見解とは一線を画し、武漢の研究施設に矛先を向けた格好だ。
流出説を強調した新サイト
今回の特設サイトでは、「コロナウイルスは自然界には存在しない特徴を持っている」「武漢のウイルス研究所では過去に安全管理が不十分だった」といった文言が並び、研究所起源説を後押しするような内容で構成されている。
加えて、研究所の衛星写真や過去の事故報道を引用しながら、「最も可能性が高いのは、研究所内での事故による流出だ」と断定的な主張も。トップにはトランプ前大統領の写真が掲載されており、情報の発信元としての姿勢も強く打ち出されている。
一方で、感染予防策に関しても、「マスクの有効性には決定的な根拠がない」とするなど、パンデミック対策への疑問を呈する記述も目立つ。
政府公式ページを置き換える形に
米メディアによると、このサイトは元々、連邦政府がワクチン接種や検査の情報を提供していた公式ページのURLに置き換わっている。つまり、一般の人々が信頼性の高い情報を得ようと訪問した際に、この“流出説特設ページ”が表示されるように変更された形だ。
政権交代以降、コロナ関連の情報発信をめぐる路線変更が幾度となく話題になってきたが、今回はその中でも特に政治色の濃い“転換”といえる。
情報の出所は議会報告書 ただし作成は共和党主導
ホワイトハウス側は、このサイトの根拠として、下院の新型コロナ特別委員会が昨年末にまとめた520ページに及ぶ報告書を引用している。この報告書では、研究所由来の可能性が高いとする評価が繰り返されているが、作成を主導したのは共和党議員らであり、バイデン政権からは一定の距離がある。
同報告書を巡っては、ワシントン・ポストなど大手紙も「政治的な思惑が強く反映されている」と指摘。また、米情報機関も一部は研究所流出説を支持する一方で、「確信度は低い」とする分析にとどまっており、専門家の間でも見解は割れているのが実情だ。
国際社会とのギャップ広がる
中国政府は当然ながら、この主張を真っ向から否定。「政治的な中傷だ」と反発し、国際的な科学調査を尊重するようアメリカに求めている。
一方、WHO(世界保健機関)や国際的な研究チームの多くは、「ウイルスの自然発生説」を有力視しており、研究所起源説を支持するには明確な証拠が不足していると慎重な姿勢を崩していない。
トランプ氏の主張を支える動き?
新サイトの内容や表現、写真の配置からも明らかなように、今回の動きはトランプ前大統領が主張してきた「武漢研究所発生説」を補強する意図が色濃くにじむ。
特に2024年の選挙戦以降、共和党は感染症対策やマスク義務化、ワクチン推進を「自由の侵害」と批判してきた経緯がある。こうした主張を再び浮上させることで、保守層へのアピールを狙った戦略の一環と見る向きも多い。
未解決の“起源論争” 科学か、政治か
新型コロナの発生源をめぐる議論は、発生から5年以上が経った今も決着を見ていない。科学的な検証がなお必要な一方で、政治的な主張が先行する構図は国際社会の分断を深めかねない。
研究所由来説か自然発生説か――。真実の解明には、冷静な分析と、政治的圧力から自由な科学的議論が不可欠だ。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。