「スマホ回線が乗っ取られる日常」――東京・大阪に出現、“偽基地局”の恐怖とその実態

スマホ回線が乗っ取られる?都市部で発見された“ニセ基地局”の衝撃

スマートフォンの回線が、知らぬ間に“誰か”に乗っ取られている――。そんな不気味な現象が、東京・大阪の都市部で確認され、携帯各社や国が動き始めている。

話題の発端は、SNSでの1つの投稿だった。

Xで拡散、実態が明るみに

「docomoが突然圏外になった後、GSM表示に変わり、謎のSMSが届いた」

この異変を最初に告発したのは、X(旧Twitter)ユーザーの“電波やくざ(@denpa893)”氏。電波調査を趣味にしている人物で、4月12日に「都内で不審な電波とSMSを確認した」と発信し、注目を集めた。

彼によると、ドコモのBand3(1.8GHz帯)以外の電波が“妨害”される状況になり、スマホが一時的に圏外に。その後、再接続しようとした端末が、すでに日本では使われていないはずのGSM(2G)に強制接続されてしまうというのだ。

“ニセ基地局”の手口と目的

このような動きを引き起こしているとされるのが、いわゆる「偽基地局(IMSIキャッチャー)」だ。外見や電波の出し方は本物そっくりだが、中身は違法機器。通信の暗号化が甘い2G通信を使って、個人情報の抜き取りや、フィッシング詐欺のためのSMSを強制的に送りつけるとされている。

しかも、ネットワーク名には「China Mobile」「China Telecom」「China Unicom」など、中国の大手キャリアの表示も確認されており、Xでは「観光客向けの詐欺ではないか」との見方も強まっている。

詐欺SMSの実態と観光客の声

送信されるSMSには、「あなたのカードの海外利用が停止された。こちらのURLにアクセスしてください」といった簡体字中国語の文面が含まれていた。リンク先はもちろん詐欺サイトだ。

実際にこのSMSを受け取ったという報告は、中国人観光客の間でも広がっている。中国のSNSには、昨年10月頃から「訪日中に不審なSMSが届いた」という投稿が複数見つかっている。

発信源は不明だが、訪日インバウンド客の増加を見越し、個人情報を狙った組織的犯行の可能性も否定できない。

大手キャリアも警戒、国も対策へ

こうした事態を受けて、携帯大手も対応を始めている。

NTTドコモは「妨害電波による影響を確認しており、関係機関と連携して対応を進めている」とコメント。ソフトバンクやKDDI、楽天モバイルも、「調査中」「注視している」としながら、すでに情報共有を開始しているという。

総務省も黙ってはいない。村上誠一郎総務大臣は4月15日の記者会見で、「都内周辺で携帯の混信が発生している。偽基地局の存在も含め、関係機関と連携して対処中」と明言した。

私たちが今できることは?

今後の大規模イベントや観光客の増加を控える中で、この問題は他人事ではない。私たち利用者にもできる対策がある。

  • スマホの設定で2G(GSM)通信をオフにする
  • 不審なSMSは決してリンクを開かない
  • 信頼できるVPNの活用で通信を暗号化
  • キャリアの公式アプリやサポートに通報する

特に2G通信は、現在ほとんど使われておらず、無効化しても支障は少ない。自衛策として設定の確認をしておいて損はない。

ニセ基地局による攻撃は、国家機関や犯罪組織が関与することもある高度な手口だ。都市部で何気なくスマホを使う――その行為が思わぬリスクと隣り合わせになっている今、警戒と情報のアップデートが、私たちの日常を守る第一歩となる。

スマホの回線を乗っ取る、“ニセ基地局”が国内で出現 詐欺SMSを強制送信 携帯各社も対策へ

関連記事

おすすめ記事

  1. 手ぶら観光の裏側で起きた“想定外”の迷惑行為 世界遺産・平等院が荷物預かりを中止した理由 観…
  2. 「観光ビザで来日して、日本の運転免許を取って帰国」——そんな現象がいま、静かに広がっています。特に…
  3. 沖ノ鳥島周辺に眠るレアメタルと中国の調査船活動――資源争奪で日中関係再び緊張
    中国、「沖ノ鳥島は岩」と再主張 日本のEEZを否定 資源めぐり緊張再燃 中国政府は2025年…
  4. 減税は日本経済の処方箋になるか? ――インフレ恐怖と古い経済学から脱却を 私たちの…
  5. 中国のブイ撤去も日本政府の無策が残した禍根 沖縄県・与那国島の南方海域に設置されていた中国の…

新着記事

  1. 日本がなぞる北欧モデルの落とし穴―移民頼みの少子化対策は本当に通用するのか 「北欧の福祉を手…
  2. 連続した異常接近が明らかに 防衛省は10日、東シナ海上空の公海で9日と10日の2日間、中国人…
  3. 参院選2025:年金・社会保障「共通基盤」で浮かぶ与野党の対立 7月20日の参院選を前に、有…
  4. 【2025年参院選】関税対策めぐり各政党の評価分かれる 中小企業支援や外交姿勢が争点に 20…
  5. ホワイトハウスワシントン2025年7月7日 石破茂 閣下日本国総理大臣東京 親愛なる総…
  6. 各党が選ぶ「物価高対策」その最優先課題とは? 物価上昇が家計を直撃するなか、2025年の参議…
  7. インドネシア・レウォトビ火山が大規模噴火 日本の気象庁が津波の影響を精査中 7月7日正午すぎ…
  8. 【紅海の緊張高まる】イスラエル軍、イエメン空爆 日本郵船の「ギャラクシー・リーダー」も標的に …
  9. 【参議院選挙の投票方法】初めてでも安心!流れや注意点を解説 2025年7月に実施される第27…
  10. 参院選2025 各党の安全保障とエネルギー政策を徹底比較 7月に控える第27回参議院議員通常…
ページ上部へ戻る