尖閣沖で中国海警船が過去最長滞在、海保が退去措置を実施—領海侵入に対する強い対応

海上保安庁は3月24日、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海に侵入していた中国海警船2隻を領海外へ退去させたと発表しました。これらの海警船は3月21日午前1時55分ごろ、尖閣諸島の南小島沖合で日本の漁船の動きに合わせるように領海内へ侵入し、一時4隻が侵入していましたが、3月23日午後8時以降は再び2隻となり、3月24日午後10時5分ごろ、領海外へ退去したことが確認されました。領海内への滞在時間は92時間を超え、過去最長の連続滞在時間を記録しました。

現場周辺の領海内では日本漁船1隻が操業しており、海警船はその漁船に近づこうとし、いずれも機関砲を搭載していたことが確認されています。中国公船による領海内への滞在時間としては、これまでの最長であった2023年3~4月の80時間36分を上回るものです。

中国当局は、領海侵入後に「日本の漁船を強制退去させた」と主張してきましたが、実際には海保の巡視船が日本漁船の安全を確保しつつ、海警船に対して退去要求や進路規制を実施していました。このような中国の行動は、領土問題を巡り少しずつ既成事実を積み重ねて実効支配を固める「サラミ戦術」の一環と見られています。

海保関係者は、「尖閣沖に現れる海警船の動向はすべて中央政府のコントロール下にある。些細な変化も見逃すことはできない」と述べています。今回の発表文には、「海保の巡視船が国際法違反の中国海警船を日本の領海から退去させた」と明記されており、海保は「現場海域の状況をより正確に伝えるため、発表内容の適正化を図った」としています。

尖閣諸島は沖縄本島の西約410kmに位置し、魚釣島、北小島、久場島などの無人島から構成されています。歴史的および国際法上、日本固有の領土であり、領有権を巡る問題は存在しません。接続水域は領海の外側12海里(約22km)の海域で、尖閣国有化以降、中国公船の航行が確認され、2020年以降は荒天時以外ほぼ毎日確認されています。

このような状況に対し、海保は引き続き領海の警備を強化し、領土・領海の保護に努めています。また、国際社会に対しても、法の支配に基づく秩序の維持と、地域の平和と安定の重要性を訴えていく方針です。

一方、中国側は自国の領土拡張を進めるため、さまざまな戦術を用いています。その中でも、「サラミ戦術」は、少しずつ領土を拡大し、最終的には全体を掌握しようとする戦略です。この戦術は、直接的な衝突を避けつつ、時間をかけて地理的・政治的な変化をもたらすことを狙いとしています。

日本政府は、こうした中国の動きに対し、国際社会と連携しながら、法の支配に基づく秩序の維持と、地域の平和と安定の確保に取り組んでいます。今後も、領土・領海の保護を最優先課題とし、必要な対策を講じていく方針です。

国際社会においては、東アジアの海洋秩序を巡る問題は重要な関心事となっています。特に、南シナ海や東シナ海での領有権を巡る争いは、国際的な航行の自由や経済活動にも影響を及ぼすため、多国間での協議や取り組みが求められています。

このような背景の中、日本は引き続き、平和的かつ安定した国際秩序の維持に貢献するため、外交的努力や防衛力の強化を進めています。また、地域のパートナー国との連携を深め、共同訓練や情報共有を通じて、対応能力の向上を図っています。

今後も、尖閣諸島周辺を含む東シナ海の安全保障環境は厳しさを増すと予想されます。そのため、政府は国民の理解と協力を得ながら、効果的な対策を講じていく必要があります。また、国際社会との連携を強化し、法の支配に基づく秩序の維持と、地域の平和と安定の確保に向けた取り組みを継続していくことが求められます。

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