トルコ・イスタンブール市長逮捕で国内外に波紋 政敵排除の疑念、抗議デモ激化、経済混乱も

トルコの最大都市イスタンブールで、エクレム・イマモール市長が汚職およびテロ関連の容疑で逮捕されたことを受け、国内外で大きな波紋が広がっています。 この逮捕は、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の政敵を排除する動きとして捉えられており、各地で抗議デモが発生、通貨リラの急落など経済的混乱も引き起こしています。

イマモール市長の逮捕とその背景

2025年3月23日、トルコの捜査当局は、イスタンブール市長であり最大野党・共和人民党(CHP)の有力政治家であるエクレム・イマモール氏を、汚職およびテロ組織との関与の疑いで正式に逮捕しました。

イマモール氏はこれらの容疑を否認し、政治的動機に基づくものだと主張しています。

イマモール氏は2019年の選挙でイスタンブール市長に当選し、エルドアン大統領率いる与党・公正発展党(AKP)の候補を破りました。 その後も再選を果たし、国内で高い知名度と支持を得ています。 エルドアン政権下での経済低迷や物価高騰により、最近の世論調査ではイマモール氏の支持率がエルドアン氏を上回る結果も報告されています。

抗議デモの拡大と政府の対応

イマモール氏の逮捕を受け、イスタンブールや首都アンカラをはじめとする主要都市で大規模な抗議デモが連日行われています。 デモ参加者は、エルドアン政権による反対勢力への弾圧と民主主義の後退に抗議しています。 当局はデモを鎮圧するため、催涙ガスや放水砲を使用し、これまでに600人以上を拘束しました。

しかし、デモは拡大を続け、多くの市民が政府への不満を表明しています。

経済への影響:リラの急落と市場の混乱

政治的混乱は経済にも影響を及ぼしています。 イマモール氏の逮捕後、トルコ・リラは対ドルで一時史上最安値を更新し、株式市場も急落しました。 中央銀行は市場安定化のため介入を行いましたが、投資家の不安は続いています。

エルドアン政権下での経済政策への不信感が高まる中、今回の政治的動揺がさらなる経済不安を招いています。

国際的な反応と民主主義への懸念

イマモール氏の逮捕に対し、国際社会からも懸念の声が上がっています。 欧州連合(EU)のウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長は、「トルコは民主主義の価値、とりわけ選挙で選ばれた者を支えなくてはならない」と述べ、懸念を表明しました。 また、ドイツのアンナレーナ・ベアボック外相は、トルコの政界で野党政治家の活動が制限されている状況を批判しています。

国際人権団体や欧米諸国も、トルコの司法の独立性と民主主義の後退について懸念を示しています。

エルドアン大統領の権力集中と今後の展望

エルドアン大統領は2003年に首相、2014年に大統領に就任し、20年以上にわたり中央政界で権力を維持しています。 2017年の憲法改正により、大統領の権限は拡大され、2018年と2023年の大統領選でも再選を果たしました。 現在の憲法では大統領の任期は2期までとされていますが、選挙の前倒し実施や憲法改正により、エルドアン氏が次の選挙にも出馬できる可能性が指摘されています。

イマモール氏の逮捕は、エルドアン政権が次期大統領選を見据えて政敵を排除しようとしているとの見方が強まっています。 エルドアン氏はイスラム色の濃い政策を推進し、批判的なメディアや反対勢力を抑圧してきましたが、経済低迷や物価高騰により支持率が低下しています。 今回の逮捕劇が国内外での批判を招き、エルドアン政権への圧力が高まる可能性があります。

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