
シンクタンク・国家基本問題研究所(国基研)は、2025年3月21日に中国で開催された全国人民代表大会(全人代)を受け、中国軍の動向とそれが日本に与える影響についての分析結果を発表しました。この中で、同研究所の中川真紀研究員は、今年中に中国軍が台湾進攻に向けた準備を一段と加速させるとの見通しを示しています。
中川氏の分析によれば、特に注目すべきは、中国軍が台湾近海での軍事演習を強化し、訓練と実戦の境界を曖昧にすることによって、台湾に物理的・心理的な圧力をかける戦術を取る可能性が高いという点です。具体的には、台湾周辺の海域での軍事演習が激化し、その規模や頻度が増しているといいます。この演習には、海軍や空軍だけでなく、無人機や戦闘機も参加しており、台湾側の反応を引き出しつつ、進攻準備が着実に進んでいることが見て取れます。
中川氏はまた、中国が台湾に対してだけでなく、周辺地域への圧力を強めるために、サイバー攻撃など新たな領域での優越性を確保する意図があるとも分析しています。特に、サイバー攻撃や情報戦、さらには軍事的抑止力を通じて、日米の共同抑止力を弱体化させる狙いがあるとのことです。
さらに中川氏は、これに対して日本が取るべき対応についても言及しています。日本は、即応体制の強化や、核抑止に関する議論を深める必要があると訴えています。特に、冷戦後の安全保障環境では、以前の防衛戦略を見直す必要があると強調し、国防の新たな枠組みが求められていることを指摘しています。
台湾情勢に対する懸念と日本の防衛戦略
中国の台湾進攻の可能性が現実味を帯びる中、台湾の防衛力強化や、アメリカとの連携強化が進む一方で、日本もその影響を受けざるを得ません。台湾に近い尖閣諸島などの領土問題が絡む中で、日本政府はこれまで以上に迅速な対応が求められています。特に、海上自衛隊の活動や、空自の警戒態勢が強化されている現状を鑑みると、サイバー戦や情報戦、さらには新領域での戦闘準備も重要な要素となってきています。
加えて、櫻井よしこ理事長は、「中国が進めている準備の規模や内容は、私たちが考えている以上に深刻だ」とし、これまでの安全保障戦略を根本的に見直す必要性を訴えています。特に、これまでの「抑止力」や「同盟関係」の枠組みが形骸化しつつある中で、今後の日本の戦略は従来のものを大きく超えた再構築が必要であると警鐘を鳴らしています。
地域の安定を守るための国際的な取り組み
日本だけでなく、国際社会全体が台湾情勢を注視しています。特に、アメリカをはじめとする民主主義国が台湾支援を強化する中、台湾国内でも軍事演習や防衛体制の強化が急ピッチで進められています。例えば、台湾の大統領府は、初めて全政府機関が一堂に会して中国の軍事的脅威に対するシミュレーションを実施しました。こうした国際的な協力や訓練を通じて、台湾と日本、そしてアメリカとの三国協力体制の強化が進んでいます。
しかしながら、台湾海峡を巡る情勢は依然として不透明であり、中国の軍事活動がエスカレートする中で、今後の展開には大きな注目が集まっています。
今後の展開と地域の平和のための対応
中国軍の動きに対して、台湾と日本、さらには国際社会がどのように対応するかが問われています。情報戦やサイバー攻撃の活発化、そして中国による軍事的圧力の増大は、もはや単なる予測ではなく、現実の脅威となりつつあります。そのため、台湾や日本はもちろん、国際社会全体で協力し、平和と安定を維持するための対策を講じる必要があることは言うまでもありません。
中国の動きに対する慎重かつ適切な対応が求められています。特に、日本においては、これまでの防衛体制の強化や、冷戦後の戦略の見直しが急務であり、政府や専門家が一丸となって安全保障政策を再構築することが求められます。