中国資本が瀬戸内の離島を買収 笠佐島で進む“静かな侵略”と日本の土地規制の限界

瀬戸内・笠佐島に中国資本 人口7人の離島に迫る“静かな侵出”と国家の無防備

瀬戸内海にぽつんと浮かぶ、人口わずか7人の笠佐島(山口県周防大島町)で、今、異変が起きている。近年、中国資本による土地取得が進み、別荘建設を目的としたインフラ整備が着々と進行中だ。島民の間には「いずれ島ごと買い占められてしまうのでは」との不安が広がっている。法律上は問題ないとされるが、安全保障上の懸念や制度の脆弱さが浮き彫りになっている。

静かに進む中国人による土地取得

笠佐島は、山口県の周防大島にある小松港からおよそ2キロ西に位置し、面積は約94万平方メートル。島には5世帯、7人が暮らしており、本土とのアクセスは1日3〜4便の連絡船のみだ。

5月初旬、林道が整備されており、舗装された道に沿って新設の電柱が並んでいた。森林を抜けた先には、木々が伐採された更地が広がり、工事車両も放置されていた。この場所こそ、近年中国人が購入した土地だという。

登記簿によれば、土地は2区画で合計約3651平方メートル。仲介した地元の不動産業者によると、ウェブサイトに掲載した分譲情報を中国・上海在住の男性が見つけ、問い合わせてきたという。この男性は、過去に日本企業に勤務していた経験があり、親日家として知られている。業者は「別荘を建てたいとの希望だったので、問題ないと判断した」と話している。

土地は2017年から2018年にかけて、男性とその妻、さらに知人の3人の中国人名義に変更されており、所有地のすぐそばにはクルーザーの係留を想定した桟橋の建設希望もあったとされる。

安全保障上、極めて重要な島

笠佐島は、海上自衛隊の呉基地から近く、潜水艦や護衛艦が行き交う航路に位置する。船さえあれば、周辺の江田島や松山まで1時間程度で移動可能だ。つまり、この島は“海の監視拠点”ともなりうる重要な場所なのだ。

中国本土には、国家動員法や国家情報法といった法律が存在し、有事の際には国内外の中国人所有地や施設を中国政府が利用できるとされている。そうした背景から、「日本の島が将来的に中国政府の拠点として利用される可能性はゼロではない」と専門家は警鐘を鳴らしている。

土地売買の法的盲点と”ザル法”の現実

なぜこのような土地取得が可能なのか。その背景には、日本が1994年にWTOの「サービス貿易に関する一般協定(GATS)」に署名し、外国人にも日本人と同等に不動産取得を認めた点がある。現在も、多くの国が外国人による不動産購入に制限や課税を設けるなか、日本は“フリーパス”状態が続いている。

2022年に施行された「重要土地等調査法」では、自衛隊や米軍基地、原子力施設、国境離島の周囲約1キロを調査対象としているが、あくまで「調査」にとどまり、売買を止める強制力はない。実際、調査後も「特段の懸念なし」と判断されるケースが多く、制度の限界が指摘されている。

山口県岩国市の市議・石本崇氏は「船があれば瀬戸内を自由に移動できる現状では、島がドローンの発着拠点になる可能性もある。複数の島が“面”で買われていくようになれば、それはもう実質的な“侵略”だ」と強い危機感を示す。

島の風景が変わる日―中国資本の波

実際、笠佐島への中国人の関心は高く、東京や埼玉に住む中国人から高額での購入希望も相次いでいるという。不動産業者の話では、他の瀬戸内の離島や広島市沖でも、中国系の不動産業者経由で別荘用地が買われているケースが増えている。

「中国本土の人がネットで物件を探し、東京や大阪にいる中国人経営の不動産会社が仲介するパターンが増えている」と業者は証言する。島の7割以上の土地を所有しているというこの業者も、「いずれは企業誘致のためにまとめて売りたい」と話していたが、中国資本への批判が強まる中で、最近は中国人への仲介を控えているという。

放置される国土と向き合うとき

“たまたま”笠佐島で始まった動きではない。北海道や九州、沖縄、長野の山間部などでも中国資本による土地取得は相次いでいる。だが、政府の対応は後手に回っており、規制強化に対する腰も重い。

漫画家の倉田真由美氏もSNS上で「このままでは日本人が日本の土地で“マイノリティ”になる」と警鐘を鳴らしており、一般市民からも不安の声が高まっている。

今、日本が向き合うべきは「合法だから良い」ではなく、「国の根幹にかかわる問題」として、早急に実効性のある制度整備と規制を進めることである。国防・安全保障の観点からも、「静かな侵略」にどう歯止めをかけるか、問われているのは今、この瞬間なのだ。

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