米国が中国企業への半導体ソフトとジェット技術の提供停止 AIと航空技術に圧力強化

米国、対中テック規制を一段と強化 AI半導体と航空産業に照準

米国が中国に対して、新たな輸出規制を打ち出した。焦点となったのは、AI開発に不可欠な半導体設計ソフトウェアと、航空機エンジンなどの重要技術だ。米商務省が米企業に対して中国企業向けのサービスを止めるよう指示したと報じられ、米中間の技術覇権争いはさらに緊迫の度を増している。

半導体設計ソフトの中国向け提供を停止

米商務省が国内の主要なEDA(電子設計自動化)ソフト企業に対し、中国企業との取り引きを停止するよう要請したと、英フィナンシャル・タイムズ紙が報じた。この措置の対象となったのは、ケイデンス・デザイン・システムズやシノプシスといった大手で、両社はAI半導体の設計に欠かせないツールを提供している。

商務省の関係者は「戦略的な製品の輸出に対しては、必要に応じて許可の見直しや条件の追加を検討する」と述べており、今後さらに対象が広がる可能性もある。

背景には、米国が国家安全保障の観点から中国のAI技術進展を懸念していることがある。EDAソフトはAIプロセッサや高度な演算装置の設計に不可欠であり、これが中国の軍事・監視用途に転用されるリスクがあるとされている。

エヌビディアの中国向け製品も規制対象に

また、米半導体大手エヌビディアが開発した中国向けのAI半導体「H20」も、新たに規制の対象となっている。これは同社が4月に明らかにしたもので、米政府から「今後は輸出許可が必要になる」との通達を受けたという。

エヌビディアは近年、中国市場での存在感を増していたが、この規制により売上に大きな影響が出る可能性がある。業界内では「中国向け製品を抑えることで、結果的に中国国内での自立開発を促す逆効果もある」との見方も広がっている。

中国旅客機産業への圧力も

同時に、米国は航空分野にも規制を広げている。米ニューヨーク・タイムズによれば、ジェットエンジンや一部化学物質の中国向け販売が停止された。特に影響を受けたのは、中国の国有企業「中国商用飛機(COMAC)」だ。同社は国産旅客機「C919」の開発を進めており、今回の措置により部品や技術の供給に支障が出る可能性がある。

「C919」は中国がボーイングやエアバスと並ぶ航空機メーカーとしての地位を確立しようと進める国家プロジェクトの一つ。だがエンジンや飛行制御システムといった中核技術では、依然として欧米メーカーへの依存度が高い。今回の措置は中国の航空機産業の成長を狙い撃ちにしたものとも読み取れる。

米中テクノロジー冷戦、世界市場に波紋

こうした動きは、米中間の「テクノロジー冷戦」とも呼ばれる構図をさらに鮮明にした。米国は2022年以降、半導体関連の対中輸出規制を段階的に強化しており、今回の措置はその延長線上にある。

米政府関係者は「中国の先端技術分野へのアクセスを制限することが、米国の戦略的優位を保つ鍵だ」と明言している。一方で、中国も米国依存からの脱却を急ぎ、国産化やサプライチェーンの多様化に拍車をかけている。

これらの対立は、単なる2国間の争いにとどまらず、世界の半導体市場や航空機市場に広範な影響を与える可能性がある。特に日本や欧州企業にとっては、サプライチェーンの再構築や、取引リスクの見直しを迫られる局面に入りつつある。

ネットユーザーの声

「米国の締め付け、いつまで続けるのか。結局中国の独自技術開発を加速させるだけでは?」
「COMACのC919、これじゃ本当に飛ばせなくなる。技術独立ってそんなに簡単じゃない」
「商務省がここまで細かく制限をかけるのは異例。半導体がもはや戦略兵器なんだな」
「中国がやってることもアレだけど、米国も覇権を守るために必死すぎる感ある」
「日本もこの板挟みの中でどう動くか、戦略的判断が問われる時代になってきた」


今回の対中輸出規制強化は、米国がAI半導体や航空技術といった戦略分野において、中国の台頭を警戒している表れである。半導体設計ソフトやジェットエンジンといった高度技術を通じた圧力は、米中の技術覇権を巡る争いを激化させ、世界経済にも波紋を広げている。今後の米中関係と、各国の対応が注目される。

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