
中国空母「遼寧」が東シナ海で艦載機を発着艦 自衛隊は即応対応
中国海軍の空母「遼寧」が2025年5月25日、沖縄県・久場島の北約200キロの東シナ海上を航行しながら、艦載の戦闘機とヘリコプターの発着訓練を行った。これに対して、防衛省は「中国の軍事活動は一段と活発化している」と懸念を表明し、航空自衛隊は即座に戦闘機を緊急発進させ、海上自衛隊も警戒監視にあたった。日本政府が中国空母による艦載機の発着艦を東シナ海で公表するのは初めてであり、地域の安全保障に新たな緊張をもたらす事案となった。
防衛省、東シナ海での軍事訓練に厳重警戒
防衛省によると、「遼寧」は護衛のミサイル駆逐艦などと共に東シナ海を航行しており、同日午前7時頃から艦載戦闘機の発着が確認された。発進した機体の数や詳細な動きについては明らかにされていないが、航空自衛隊は領空侵犯の恐れを排除できないとして、複数の戦闘機をスクランブル発進させた。現場海域では、海上自衛隊の護衛艦が同時に警戒任務を展開し、艦隊の動向を追跡した。
防衛省統合幕僚監部は「中国は近年、空母戦力を急速に拡大させており、今回の行動もその一環とみられる」と指摘。さらに「東シナ海周辺での活動が常態化すれば、我が国の防衛体制に影響を与えかねない」として、今後も警戒態勢を強化する方針を示した。
「遼寧」は実戦配備に向けた訓練か 空母戦力の質的拡充
中国海軍が運用する空母「遼寧」は旧ソ連製空母を改修して2012年に就役したもので、現在では戦闘機「殲-15」などを搭載する運用能力を有している。今回の東シナ海での訓練は、南シナ海や台湾周辺での活動に加え、日本近海でも空母運用技術の実地訓練を進める狙いがあるとみられている。
また、中国は「遼寧」のほかにも国産空母「山東」「福建」の配備を進めており、遠洋展開能力を強化している。今回のように艦載機が発着を繰り返す訓練は、空母打撃群としての実戦的運用を視野に入れた演習である可能性が高い。
日本の対応と地域情勢への影響
日本側の対応としては、航空・海上両自衛隊による即時の監視体制に加え、関係省庁間の情報共有と国際連携の強化が求められる。近年、尖閣諸島周辺では中国海警局の艦船が領海に接近する事例が頻発しており、今回の空母訓練はその延長線上にあるとも受け取られている。
特に、今月上旬には中国海警のヘリが尖閣付近で日本の領空を侵犯したとの疑いもあり、防衛当局は「偶発的な衝突のリスクが高まっている」と警鐘を鳴らしている。
ネット上の声
X(旧Twitter)などSNSでは、一般市民からもさまざまな反応が寄せられている。
「また中国が挑発行為をしてきた。政府は毅然とした対応を」
「自衛隊の即応力は頼もしい。でもこれが常態化したら怖い」
「空母から艦載機を発進させるって…これは事実上の示威行動だろう」
「平和を守るためにも、日米連携をもっと強化すべきだ」
「中国の軍拡、本当に止まらないな。アジアのバランスが崩れる」
今後の焦点
日本政府としては、平時からの即応体制を強化すると同時に、米軍との情報共有を加速し、連携の深度をさらに高めていく必要がある。特に米国が関心を示す「自由で開かれたインド太平洋」構想の中で、日本の役割が改めて問われる事態である。
東シナ海の軍事的緊張が高まるなかで、外交的な対話の糸口を模索しながら、現実的な安全保障政策を進めることが、今後の重要な課題となるだろう。