
白川郷、観光公害対策で駐車場予約制を導入へ
岐阜県白川村の世界遺産「白川郷」は、美しい合掌造りの集落で知られる観光地。しかし、年間約200万人の観光客が押し寄せることで、渋滞、違法駐車、ゴミのポイ捨てといった観光公害が深刻化している。こうした問題に対応するため、白川村は観光バスの駐車場を予約制にする方針を打ち出した。2026年度からは一般車にも予約制を拡大する計画だ。
観光公害で住民生活に影響
白川郷は、四季折々の美しい風景と歴史的な合掌造り家屋で国内外から人気を集めているが、観光客の急増により地元住民の生活に支障が出ている。特に渋滞が深刻で、休日には主要なアクセス道路が観光バスや自家用車で溢れ、住民が買い物にも出かけられない状況が続いている。
白川村の小瀬智之観光振興課長は、「観光客が駐車場に入りきらず、私有地に無断駐車するケースも多発している」と語る。また、観光客のマナーの悪さも問題視されており、ポイ捨てや違法な白タク行為も確認されている。
ツアーバスの予約制で混雑緩和へ
こうした観光公害を抑制するため、白川村はまずツアーバスの駐車場に予約制を導入する方針だ。村によると、観光客全体の約4割が団体バスで訪れており、この部分の交通量をコントロールすることが混雑緩和につながると判断した。
「バスは主に日本の旅行会社が運行しているため、事前に予約を義務付けることが比較的容易だ」と小瀬氏は説明する。これにより、無計画なバス来訪が減少し、駐車場の効率的な運用が期待されている。
さらに、2025年10月からは駐車料金も大幅に引き上げられる。普通車は1000円から2000円に、バスは3000円から1万円に値上げされる予定だ。バス運転手の中には「値上げは痛いが、観光地の保全を考えれば仕方がないかもしれない」という声もある。
2026年度から一般車も予約制に
白川村は、ツアーバスの予約制導入後、2026年度からは一般車にもこの制度を拡大する予定だ。これにより、個人旅行者も事前に駐車場を確保しなければならなくなる。村は観光公害対策として、駐車場の無秩序な利用を抑制し、地域住民の生活を守ることを目指している。
白川郷は、観光庁の「オーバーツーリズム対策地域」にも指定されており、観光客の増加と地域の共存をどう実現するかが大きな課題となっている。
参考事例:日本平動物園の成功と課題
白川村が参考にしているのが、静岡県の日本平動物園の事例だ。2025年のゴールデンウィークには、試験的に駐車場の完全予約制を導入し、周辺の渋滞を大幅に緩和することに成功した。
日本平動物園広報担当の太田千晴氏は「渋滞は消えたが、来園者は前年比39%減少した」と明かし、予約制の導入にはメリットとデメリットがあると指摘した。この事例から、白川郷でも観光客数の減少が懸念されるが、観光地の持続可能性を確保するためには避けられない選択とも言える。
観光と地域の共存に向けた挑戦
白川郷は、日本の観光地が抱える「観光公害」の代表的な事例となっている。地域の景観や住民生活を守りながら、観光収入も確保するというバランスの取り方が問われている。
観光アナリストの鳥海高太郎氏は「駐車場予約制は、観光客が計画的に行動できるようになるため、混雑を緩和し、観光の質も向上する効果が期待できる」と述べた。
白川郷はこの取り組みを通じて、日本全体の観光地が直面する「観光公害」への解決策を示すモデルケースとなることを目指している。