尖閣諸島周辺での中国海警船の活動強化—海上保安庁、武装船認定と対応強化

海上保安庁、尖閣沖の中国海警船に対する表記変更

海上保安庁は2025年3月5日、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域で活動する中国海警船について、従来の「砲らしきものを搭載」から「砲を搭載」に修正し、公式に武装船として認定したと発表しました。この表記変更は、従来の表現が実態を反映していないとの判断に基づいて行われました。

中国海警船の武装確認と射撃訓練の公開

中国側は2024年9月に、国営中央テレビ(CCTV)を通じて、海警局所属の船舶が射撃訓練を行う様子を公開しました。これにより、搭載されている機関砲が殺傷能力を有する武器であることが明確になりました。さらに、英国の軍事専門書『ジェーン年鑑』2024年版では、海警船2303および2305の2隻に「76mm砲搭載」と記載され、海上保安庁はこれらの情報を総合的に考慮して公式に「武装船」と認定しました。

尖閣諸島周辺の中国船舶の常態化

尖閣諸島周辺海域は、2012年の国有化以降、中国の公船が頻繁に航行しており、特に2020年以降は荒天時を除きほぼ毎日確認されています。2024年6月には、機関砲を搭載した中国海警船4隻が同時に日本の領海に侵入する事案が初めて確認されました。その後も、76mm機関砲を搭載した船舶の航行は常態化しており、中国側による現状変更の試みが鮮明になっています。

海上保安庁の対応と対策

海上保安庁は、尖閣周辺海域での中国海警船の活動に対して、警告と監視を強化しています。領海侵入時には、巡視船が退去を要求し、外交ルートを通じて中国政府に抗議しています。さらに、海上保安庁は「海上保安能力強化に関する方針」を策定し、巡視船や航空機の増強、無操縦者航空機の導入など、監視体制の強化を進めています。

多国間協力と国際社会との連携強化

海上保安庁は、単独での対応だけではなく、国際社会との連携を深めています。具体的には、北太平洋海上保安フォーラム(NPCGF)やアジア海上保安機関長官級会合(HACGAM)、世界海上保安機関長官級会合(CGGS)への参加を通じて、国際的な海上保安体制の強化を図り、自由で開かれたインド太平洋の実現を目指しています。

湾有事に備える海上自衛隊との連携

台湾有事を想定した場合、海上自衛隊と海上保安庁の役割分担が重要な課題となります。海上自衛隊は戦闘行動を担い、海上保安庁は法執行を担当します。これにより、戦闘行動と法的手続きの間で適切な連携が求められます。海自と海保の任務の峻別と協力強化が、地域の安定と平和を守るために不可欠です。

中国海警船の活動頻発と日本の懸念

尖閣諸島周辺では、中国海警局に所属する船舶の活動が常態化しており、日本政府はこれに強い懸念を示しています。中国側は、力を背景に一方的な現状変更を試みており、日本は尖閣諸島が疑いのない領土であると主張しています。今後も日本は、これらの活動に対して強い姿勢で対応し、国際社会との連携を強化する方針です。

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