京都大学と鹿島建設が描く未来の宇宙居住構想

京都大学と鹿島建設が共同で進める「スペースコロニー」構想は、月面や火星上に人工的な重力を持つ居住施設を建設し、人類の宇宙進出を現実のものとする壮大なプロジェクトです。この取り組みは、SF作品で描かれる未来の生活を現実のものとする可能性を秘めています。

人工重力居住施設「ルナグラス」の概要

「ルナグラス」は、月面に建設される人工重力居住施設で、直径200メートル、高さ400メートルのシャンパングラスのような形状をしています。施設内には、1万人が居住可能な多層階の住居や、森や海などの自然環境が再現される予定です。月の重力は地球の約6分の1ですが、施設を1分間に3回転させることで遠心力を利用し、地球と同等の重力環境を人工的に作り出す仕組みとなっています。

低重力環境の課題と解決策

低重力環境では、長期間の滞在が骨や筋力の衰え、血液循環への影響、脳委縮、視神経への悪影響などを引き起こす可能性があります。これらの問題を解決するため、人工重力を持つ居住施設の建設が検討されています。「ルナグラス」のような施設は、地球と同等の重力環境を提供することで、これらの健康リスクを軽減し、宇宙での長期滞在を可能にすることが期待されています。

惑星間移動システム「ヘキサトラック」の構想

また、月と火星を結ぶ人工重力交通システム「ヘキサトラック」の構想も進められています。このシステムでは、月面から火星まで約6ヶ月の移動を想定し、長さ3,000メートルのレールを利用して車両を牽引する仕組みが検討されています。車両は回転しながら移動することで、人工的に重力を発生させることが計画されています。

他国の同様の取り組み

日本国内での取り組みに加え、他国でもスペースコロニーに関する研究が進められています。例えば、アメリカ合衆国ではNASAが「オリオン計画」を通じて、月面基地や火星探査のための技術開発を行っています。また、欧州宇宙機関(ESA)も、長期的な宇宙居住を視野に入れた研究を進めており、国際的な協力の下で技術開発が行われています。

共同研究の進展と今後の展望

2022年に発表された共同研究「月や火星に住むための人工重力施設を京都大学と鹿島が共同研究」では、人工重力、縮小生態系、人工重力交通システムの3つの構想が掲げられました。その後、2024年12月には、月面人工重力居住施設の成立性を確認するための具体的な研究が開始されました。今後5年間で、ルナグラスの構造や施工方法、居住性、人体への影響評価、閉鎖生態系の確立などが検討され、30年代には地上でのモデル施設の建設が目指されています。

地球上での過重力施設の可能性

さらに、地球上での過重力施設の実現性も検討されています。回転体独自の課題に挑戦し、地球上での人工重力施設の実現性が確認されれば、骨粗鬆症の抑制やトレーニングなど、健康増進施設としての実用化が期待されています。

宇宙進出に向けた国際的な協力の重要性

このような大規模な宇宙施設の建設は、国際的な協力の下でしか実現しないと考えられています。宇宙進出の黎明期である現在において、この共同研究が人類の結束のきっかけとなり、平和的な宇宙開発の実現に寄与することが期待されています。


京都大学と鹿島建設の共同研究による「スペースコロニー」構想は、月面や火星上に人工的な重力を持つ居住施設を建設し、人類の宇宙進出を現実のものとする壮大なプロジェクトです。人工重力居住施設「ルナグラス」の建設や、惑星間移動システム「ヘキサトラック」の開発など、具体的な研究が進められています。これらの取り組みにより、宇宙での人類の生活が現実のものとなり、地球外での新たな社会の構築が期待されています。

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