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- ニセコ町でも無許可森林伐採発覚 中国系企業が届け出なしで開発、町は復旧要請へ

中国系企業による無届け伐採がニセコ町でも発覚 町は復旧を要請へ
北海道・倶知安町で明るみに出た大規模な無許可森林伐採の問題が波紋を広げる中、隣接するニセコ町でも同様のケースが確認されました。伐採を行ったのは東京に本社を置き、中国人が代表を務める企業。町への必要な届け出を一切行わず、森林を切り開いていたことが分かりました。町は今後、現地の調査を進めたうえで、事業者に対し復旧を求める方針です。
届け出のない森林開発 階段や小屋も確認
問題が起きたのは、ニセコ町曽我地区。現地には細い丸太で組まれた階段や、小屋のような建物、金属製の手すりまで設置されており、明らかに人の手が入った形跡がありました。森林法により「森林として保全すべき区域」と指定されているこの場所では、本来であれば町への事前届け出が義務付けられています。しかし、町が管理する伐採届け出台帳には該当の申請記録は存在しておらず、完全に無許可での開発行為とみられています。
住民からの通報を受けた町は、5月下旬に現地を確認。関係者への聞き取りで、伐採は6月1日から1週間ほどの間に行われたことが判明しました。さらに、切り出した木材はそのまま敷地内の道や階段の資材として再利用されたと説明されています。
地元住民に広がる不安 「森を金儲けの道具にしないで」
この地域は、自然を活かした観光地として国内外から人気を集めてきました。その分、森林や水資源など、豊かな自然を守ることが住民たちにとっては非常に大切な課題です。しかし、こうした開発行為が届け出もなく強行されたことで、地域に暮らす人々からは強い懸念の声が上がっています。
「あちこちで無秩序に開発が進んでいて、地元の声が届いていない気がする。森はお金儲けのためだけにあるんじゃない。元に戻すには何十年もかかるのに…」
自然との共生を重んじるこの町にとって、こうした乱開発は地域の未来を脅かす存在です。観光資源としての価値も含め、持続可能な開発との両立が問われています。
背景にはインバウンド投資の急増も
ニセコや倶知安といった後志(しりべし)地域は、近年リゾート開発のメッカとして世界的に注目を集めてきました。特に外国人投資家による別荘やホテル建設が相次ぎ、不動産取引が活発化。土地の取得から建設までのプロセスで、日本の法制度や地域ルールが軽視されるケースも増えています。
今回、伐採を行ったのは中国人が代表を務める企業で、東京に本社を置いています。町は作業停止を指示し、法的手続きを含む対応を検討しているとのことです。
倶知安町でも無許可伐採が同時進行
ニセコ町の問題が明らかになる少し前、隣の倶知安町でも、建築を目的とした無許可伐採が発覚しました。対象地は約3.9ヘクタール。宅地造成に伴って大量の木々が伐採され、住宅2棟の建設が進められていましたが、建築確認申請は出されておらず、建築基準法に抵触する違法状態でした。
道は事業者に対し、6月中に伐採した森林の2.7ヘクタール分の植林計画を求め、残る1.2ヘクタールについても対応を協議中です。
北海道と町が連携して対応へ 問われる監視体制と法の実効性
鈴木直道・北海道知事はこの一連の事案を「極めて悪質」とし、環境破壊を招く開発行為への厳しい姿勢を示しました。倶知安町議会も道に対し、再発防止のための法整備や監視体制の強化を強く要請しています。
森林法では、無届け伐採には最大で10万円の過料が科される可能性がありますが、現実にはその金額が抑止力として十分とは言えません。今回のように、土地開発による経済的利益が大きい場合、過料の額はあまりに軽すぎるという指摘もあります。
復旧とルールの明確化
ニセコ町は今後、伐採された範囲の正確な測定を進め、企業側に対して原状回復や再植林を求める方針です。また、町議会や有識者を交えた検証も行い、外国人や外資系企業による開発に対して、より厳格なガイドラインの整備を視野に入れています。
持続可能な観光地としての未来を守るためには、開発の自由と自然保護のバランスをどう取るかが大きな課題です。安易な利益追求型の開発に歯止めをかけるためにも、地方自治体と国が連携し、現行制度の実効性を高めていくことが求められています。
観光と開発の交差点で問われる「倫理」
今回の問題は、ただの届け出忘れや小規模な違反にとどまりません。美しい自然を売りにする町が、投資対象として切り刻まれていく現実に、地域社会全体が揺れています。
環境を犠牲にした開発は、やがて観光資源そのものを失わせかねません。外国資本の流入が加速する中で、日本の地方がどのように地域主権と自然保護を両立させていくのか――ニセコと倶知安の事例は、全国の自治体にも重要な警鐘を鳴らしています。