政府備蓄米、早期放出へ 市場安定へ買い戻し条件付き販売を導入

2025年1月24日、江藤拓農林水産大臣は、東京・霞が関での記者会見において、米価の高騰に対応するため、政府備蓄米の「買い戻し条件付き販売」を準備中であることを明らかにしました。

この措置は、全農や経済連、全集連などの集荷団体に対して、一定期間後に政府が買い戻すことを条件に備蓄米を販売する方式です。農水省は、1月31日に開催される食料・農業・農村政策審議会の食糧部会で、この仕組みを明記した基本指針を諮問し、審議・答申を得る予定です。

江藤農相は、昨年と比較して集荷業者に集まる米の量が約17万トン減少している厳しい状況を指摘し、現行の食糧法では備蓄米の放出や貸与の条件として、大規模な不作や海外向け貸し付けしか想定していないことに言及しました。しかし、内閣法制局との協議の結果、貸し付けであれば法改正を伴わなくても実施可能との見解を得たため、今回の措置を進めることとなりました。

政府備蓄米の運用は、国内の食料安全保障を確保するための重要な政策の一環です。備蓄米の放出は、主に以下の状況で行われます:

  1. 供給不足時:天候不順や自然災害などで国内の米生産量が大幅に減少し、市場での供給が不足した場合。
  2. 価格高騰時:米の市場価格が急激に上昇し、消費者の負担が増大する場合。
  3. 緊急時対応:災害や国際的な緊急事態により、迅速な食料供給が求められる場合。

備蓄米の放出に関する判断は、農林水産省が中心となり、食料・農業・農村政策審議会の意見を踏まえて行われます。具体的な放出量や価格設定は、市場の状況や在庫量を考慮して決定されます。

備蓄米の放出方法としては、主に以下の手段が取られます。

  • 一般競争入札:民間の流通業者や販売業者に対して、入札を通じて備蓄米を販売します。これにより、公正性・透明性を確保しつつ、市場への供給を行います。
  • 買い戻し条件付き販売:今回の措置のように、一定期間後に政府が買い戻すことを条件に、集荷団体に備蓄米を販売します。これにより、一時的な供給不足や価格高騰に対応します。
  • 貸与:緊急時や特定の需要に応じて、備蓄米を一時的に貸し出すことがあります。

備蓄米の適切な運用と放出は、国内の食料供給の安定と価格の安定化に寄与します。特に、近年の気候変動や国際情勢の不安定さを背景に、食料安全保障の重要性が増しており、政府の迅速かつ適切な対応が求められています。

今回の「買い戻し条件付き販売」は、法改正を伴わずに迅速に実施可能な措置として注目されています。農水省は、食糧部会での審議・答申を経て、早ければ来週にも具体的な数量や価格を公表し、速やかに市場への供給を開始する見通しです。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


おすすめ記事

  1. 令和7年度の国民負担率、46.2%に達する見通し 令和7年3月5日、財務省は令和7年度の国民…
  2. 2025年以降に予定されている増税・負担増のリストを作りました。 以下は画像を基に作成した「…
  3. 洋上風力に立ちはだかる現実 三菱商事の巨額損失が突きつけた問い 真っ青な海と空、そして白く輝…
  4. 日本を訪れる外国人観光客の数は年々増加しており、特に中国人観光客の訪日人数は目覚ましく、昨年は70…
  5. 全従業員をリストラ通告「夢の電池」開発企業に異変 開発データ消失の恐れも 福井県の全樹脂電池…

新着記事

  1. 米国のドナルド・トランプ前大統領は14日、半導体やスマートフォンなど中国製電子機器の輸入について「…
  2. 迷走するトランプ関税政策スマホ「除外」から一転、半導体関税へ 振り回されるテック業界 米トラ…
  3. 国保未納、税金で穴埋め 外国人医療費問題に新宿区が悲鳴
    外国人の「医療費未払い」問題、自治体を圧迫 制度見直しへ議論急務 日本の誇る皆保険制度が、い…
  4. 【高校教科書に「夫婦別姓」記述が急増 賛否分かれる教育現場の声】 文部科学省がこの春公表した…
  5. 洋上風力に立ちはだかる現実 三菱商事の巨額損失が突きつけた問い 真っ青な海と空、そして白く輝…
  6. 感染症の流行
    条約より先に検証を──「パンデミック条約」大筋合意の裏で問われる“あのとき”の総括 世界保健…
  7. 米トランプ政権は11日夜、中国製品への報復関税「相互関税」の一部から、スマートフォンなどの主要な電…
  8. 国債上昇と怒るトランプ
    トランプ関税の余波、長期金利が世界同時に急騰 米国の国債市場が今、異常なまでの揺れを見せてい…
  9. 米中貿易戦争が新局面に:中国、報復関税は「これで打ち止め」 中国政府は11日、米国からのすべ…
  10. 最低所得補償で社会活動活発に、労働意欲減退せず ドイツ研究所
    無条件の支援が生む変化:世界各地で進むベーシックインカムの実証実験 近年、世界各地で注目を集…
ページ上部へ戻る