米グーグルもDEI見直しを表明 – トランプ大統領令準拠が理由

DEIプログラムとは何か?

DEIとは、「多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包摂性(Inclusion)」の頭文字を取った概念であり、企業や組織が多様な人材を受け入れ、公平な機会を提供し、包括的な環境を構築することを目的とした取り組みを指します。もともとは社会的マイノリティ(人種、性別、障害の有無、性的指向など)に属する人々の雇用促進や昇進機会の提供を目的として導入されました。

しかし、近年では特定のグループを優遇しすぎることで、他の従業員が不利益を被るケースが増え、新たな不平等が生まれているとの指摘が相次いでいます。そのため、DEIプログラムのバランスを見直し、すべての従業員に公平な機会を提供する必要性が高まっています。

DEIプログラムの行き過ぎと見直しの必要性

米アルファベット傘下のグーグルは2025年2月5日、社内文書を通じて、これまで進めてきた「多様性、公平性、包摂性(DEI)」の取り組みの一部を見直すことを通知しました。少数派グループからの従業員採用を増やす目標を撤回し、今後は意欲的な採用目標を設けないと明示しました。

DEIプログラムは本来、公平な職場環境を目指すものでしたが、過度な優遇措置や特定のグループへの偏った支援が問題視されるようになりました。公平性を確保するどころか、逆に新たな不平等を生んでいるとの批判が高まり、見直しの必要性が指摘されています。

DEI見直しの背景 – 世界的な流れ

グーグルの今回の決定の背景には、トランプ大統領の新たな大統領令があります。トランプ政権は連邦政府全ての省庁に対し、DEIの廃止を指示し、民間企業にも公平な機会提供の観点からDEIの是正を求めています。

米国だけでなく、ヨーロッパやアジアでもDEIプログラムの過剰な施策が社会的な分断を招くとの指摘があり、企業は慎重な対応を求められています。特定のグループを優遇するのではなく、全ての従業員に公平な機会を提供する新たなアプローチが必要とされています。

DEI見直しを表明した企業

グーグルだけでなく、他の大手企業もDEIの見直しを進めています。以下の企業がすでにDEI戦略の変更を発表しました。

  • メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック):DEI計画の終了を表明。
  • アマゾン・ドット・コム:DEIの取り組みを縮小。
  • ウォルマート:2024年11月にDEI戦略の縮小を発表。
  • マクドナルド:多様性確保のための目標を廃止。

これらの企業の決定は、過度なDEIプログラムが公平な職場環境の形成を阻害しているという認識が広がっていることを示しています。

企業に求められる新たな公平性の確保

DEIプログラムの見直しが進む中、企業は慎重な対応を求められています。公平性を確保するためには、特定のグループに焦点を当てた政策ではなく、全従業員に対する公正な評価と機会の提供が重要です。

また、過剰なDEIプログラムの廃止による新たな課題にも備えなければなりません。企業ブランドや社会的責任を考慮しながら、全社員が公平に成長できる環境を構築する必要があります。

今後の見通し – 世界的な調整

今後、DEIを推進してきた企業は政府の方針や社会の動向を見極めながら、自社の戦略を調整していく必要があります。特に、

  • 特定のグループへの偏った支援を是正
  • 能力主義を重視した評価制度の確立
  • 公平な採用・昇進機会の提供

といった観点から、バランスの取れたアプローチが求められます。

最終的に、DEIの取り組みは企業の持続可能な成長や社会的責任と密接に関連しているため、短期的なトレンドに左右されず、長期的な視点で戦略的な判断を行うことが重要です。

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