2025年2月6日、中国大使館の元三等書記官である中国籍の徐耀華容疑者(62)と、元経理担当の男性(28)が、新型コロナウイルスの影響による休業給付金を不正に受給した疑いで警視庁公安部に逮捕されました。彼らは、実際には休業していないにもかかわらず、2020年から2022年にかけて13回にわたり虚偽の申請を行い、総額370万円以上を詐取したとされています。
徐容疑者は、1989年まで中国文化省から日本に派遣され、中国大使館で三等書記官を務めていました。退職後は、東京・六本木や銀座、渋谷などで複数の高級中華料理店を経営し、その中にはフカヒレやアワビ、伊勢えびなどの高級食材を提供する店舗も含まれています。彼の経営する「御膳房 六本木店」は、グルメサイトで「名店」として紹介され、歴代首相や日本の政財界、中国大使館関係者にも利用されてきました。
しかし、今回の捜査では、同店を含む約20か所が家宅捜索の対象となりました。捜査関係者によれば、徐容疑者は他の従業員にも虚偽の申請を指示していたとみられ、だまし取った給付金の総額は数億円規模にのぼる可能性があるとされています。実際には営業を続けていたにもかかわらず、休業給付金を不正に受給し、その資金を従業員の給与支払いに充てていた疑いが持たれています。
新型コロナウイルスの影響を受けた事業者を支援するために設けられた休業給付金制度は、多くの事業者の経済的支援となりました。しかし、その一方で、制度を悪用した不正受給の事例も報告されています。例えば、2022年5月、高知地方裁判所は、虚偽の申請により持続化給付金を約2300万円だまし取った被告に対し、懲役4年の実刑判決を言い渡しました。
また、同年3月には、大津地裁で、組織的に持続化給付金を約2000万円不正受給した不動産会社社長に対し、懲役4年6月の実刑判決が下されています。
これらの事例からもわかるように、給付金の不正受給は厳しく取り締まられ、実刑判決が下されるケースが多く見られます。詐欺罪は「10年以下の懲役」という刑罰が定められており、罰金刑の規定がないため、起訴され有罪となった場合、執行猶予がつかない限り刑務所に収監されることになります。特に、組織的・計画的な不正受給や被害金額が高額な場合、厳しい判決が下される傾向にあります。
給付金詐欺の手口は多岐にわたり、実際には営業を続けているにもかかわらず休業を装ったり、売上が減少したと偽ったりするケースが報告されています。また、個人事業主を装い、虚偽の事業収入を申告して給付金をだまし取る手口も見られます。これらの不正行為は、真に支援を必要とする事業者への給付金支給を遅らせる原因ともなり、社会的な問題となっています。
今回の事件では、元中国大使館書記官という経歴を持つ人物が関与していることから、国際的な注目も集まっています。警視庁公安部は、徐容疑者の経営する店舗や関連施設を徹底的に捜索し、資金の流れや不正の実態解明を進めています。今後の捜査の進展により、さらなる不正の全貌が明らかになることが期待されます。
給付金制度は、経済的困難に直面する事業者を支援するための重要な施策です。その適切な運用と不正防止のためには、申請内容の厳格な確認や監視体制の強化が求められます。また、事業者自身も倫理的な行動を心掛け、制度の趣旨を理解した上で適切に利用することが重要です。
今回の事件を契機に、給付金制度の運用や監視体制の見直しが進むことが予想されます。不正受給を未然に防ぐための対策を強化し、真に支援を必要とする事業者が適切に給付金を受け取れる環境を整えることが、今後の課題となるでしょう。
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